第317回 参議院選挙結果が金融市場に及ぼす影響は?

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第317回 参議院選挙結果が金融市場に及ぼす影響は?

<質問>

7月21日に行われた参議院選挙では、衆参ねじれが解消されました。選挙結果が金融市場に及ぼす影響をおしえてください。

<回答>

今回の参議院選挙の結果による衆参ねじれ解消は、言ってみれば「市場の事前予想を裏切らなかった」格好で、新たなプラス材料を提供することはなかったものの、期待を裏切らなかったことと、そもそもねじれの解消自体がこの国の運営をスムーズにすること、という点がプラスなのではないでしょうか。ただ、ねじれが解消されたことで短期的に市場に大きなプラスとなるような材料は見当たりません。やはりねじれの解消によって日本の成長率上昇・財政改革などが実現できるかどうかがポイントだと思われます。

アベノミクスと呼ばれる 安倍晋三政権の経済政策は金融緩和・財政政策・成長戦略(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)の3つです。1つ目の金融緩和は、景気を刺激すること・デフレマインドを払拭すること・2%のインフレ率の実現、を目標にしています。これらの目標達成の進捗はまだ見えてきていませんが、金融緩和による副作用とも言うべき株高や円安は確認できます。内閣府の資料などでは日本国債の利回りと物価連動債の利回りから算出される債券市場関係者が見込むインフレ率の上昇をもって効果があると言おうとしているようですが、本来は「企業・家計に定着したデフレマインドを払拭」するというものであり、債券市場参加者がインフレを見込むかどうかをもって測るものではない気がします。景気改善によって家計が潤い、需要が増えることで健全な年率2%程度の物価上昇を発生させることを目標にしているのであれば、これまでの効果は限定的だと思われます。また、ねじれ解消によって金融緩和を更におし進めやすくなったとしても金融緩和だけをもってその目標を果たすのは困難だと思われます。金融緩和による需給要因での株高はある程度期待できると考えられますが、2013年上期で既に4割上昇し、予想PERが上昇しながら株価上昇している状況では大きな余地が残されているとは考えにくいのではないでしょうか。

第2の財政政策については10兆円規模の財政支出がその柱ですが、内容は①復興・防災対策
②成長による富の創出(民間投資喚起と中小企業対策)
③暮らしの安心・地域活性化(地方の資金調達への配慮)、です。

これらによる市場に対する短期的な影響は考えにくいですが、もしこれらが本当に日本の成長率を押し上げていくならば市場にとっては中長期的なプラス材料となるでしょう。ちなみに7月9日に発表されたIMFによる日本のGDP成長率予想は2013年が2.0%、2014年が1.2%です(2012年実績1.9%)。

第3の成長戦略については「民間需要を持続的に生み出し、経済を力強い成長軌道に乗せていく」「投資によって生産性を高め、雇用や報酬という果実を広く国民生活に浸透させる」とのことですが、これも具体的な内容や効果のほどはまだ見えてきません。

ねじれの解消により、日本の成長率上昇・財政改革を進めるような政策が実行できるかが、中長期的に市場にプラス材料を与えるか否かの分かれ目になると思われます。

コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

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