第318回 円安トレンドは再開するのか?円安小休止の理由 (JPモルガン・アセット・マネジメント)

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第318回 円安トレンドは再開するのか?円安小休止の理由 (JPモルガン・アセット・マネジメント)

<質問>

このところ為替市場における円安方向の動きが止まってしまっているように思えるのですが、その理由を教えてください。また、今後、円安への動きが再開することを期待していてもいいのでしょうか?

<回答>

ご質問、どうもありがとうございます。今回はJPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。
確かに、ご指摘の通り、ドル/円為替レートで見た場合、5月に103円台を付けて以来、ほぼ3カ月間、概ね95~102円のレンジ相場が継続しています。一般的に、為替レートの動きは、短期的には金利差、長期的にはインフレ率の差で説明できるといわれていますが、このところの円安小休止の理由も、概ね、この2つの要因で説明がつくと思われます。

昨年後半から急速に進んだ円高修正、あるいは円安の動きですが、そもそもは、インフレ率の差によって説明される長期トレンド線(購買力平価に基づくトレンド線で、現在80円台後半から90円台前半ぐらいにあると考えられます。)よりも、当時、大幅に円高方向に振れていた実際の為替レートが、アベノミクスという触媒が入ったことで、長期トレンド線の方向に戻る動きから始まったものと考えられます。つまり、長期均衡点への回帰です。そこに、日銀の異次元金融緩和と米国の緩和縮小観測が重なって、日米金利差拡大への期待が高まり、短期的な観点からも円安が進んだものと思われます。

では、ご質問いただいた、なぜ、5月以降、円安方向への動きが止まったかということですが、これは、上記の理由の裏返しで考えられます。まず、長期的な観点から見ると、現在の95~100円のドル/円為替レートは、80円台後半から90円台前半のあたりを通っていると考えられる購買力平価のトレンド線よりも、すでに円安の位置にあり、1年前、70円台だったころには円安方向を向いていた長期均衡点への回帰の圧力が、今は、逆方向で作用している可能性があるということです。一方、金利差に基づく短期的な観点から見ると、日本は異次元金融緩和の真っ最中、米国はQE3縮小のタイミングの模索中ということで、どちらかといえば、金利差は拡大方向、つまり、円安方向への力が作用しやすい状況と考えられます。6月に米中央銀行のバーナンキ議長が年内のQE3縮小開始に明確に言及した後、ドル/円為替レートが95円台から101円台まで円安方向に動いたことは、近い将来における金利差拡大を市場が期待したためと考えられます。しかしながら、その後、バーナンキ議長も含めた米中央銀行関係者からのややトーンダウン気味の発言が相次ぐと、金利差拡大への期待もしぼみ、再びレンジ内の動きに戻ってしまったという顛末です。つまり、現状は、長期的観点からの圧力と短期点観点からの期待が逆方向を向き、かつ、微妙にバランスしているために、横ばいの動きが継続しているものと考えられます。

では、次は、どちらに動くのか?これは、大変難しい問題ですが、一般的に、一旦為替トレンドが発生すると一定期間継続する傾向があること、長期的な力が作用して為替トレンドの方向性が変わるには、かなりの時間と蓄積を必要とすること等から、現状は、どちらかといえば、円安方向の金利差拡大の短期的な力に分があるものと思われます。つまり、もう少し、米国景気の回復が鮮明になり、米中央銀行の金融緩和措置の縮小が明確に視野に入ってくると、もう一段円安が進む可能性があると思われます。しかしながら、すでに長期的観点からは逆方向、つまり、円高方向への圧力がかかり始めている可能性があることも、常に、意識しておいてください。

コラム執筆:
鈴木英典(すずき・ひでのり)

JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社

投資戦略ソリューション室長

JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」https://www.jpmorganasset.co.jp/wps/portal/Column/Indexや「資産運用の井戸端トーク」https://www.jpmorganasset.co.jp/jpec/ja/promotion/column/index.htmlを執筆。

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