第326回 ちょっと心配は残るものの概ね良かった日銀短観 (JPモルガン・アセット・マネジメント)

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第326回 ちょっと心配は残るものの概ね良かった日銀短観 (JPモルガン・アセット・マネジメント)

<質問>

10月1日に発表された日銀短観は、リーマン後最高と報道されていましたが、同日の日経平均の上昇が小幅に留まるなど、市場の反応は今一つだったように思われます。どこか懸念される点があるのでしょうか?

<回答>

ご質問いただき、どうもありがとうございます。今回はJPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。

まず、日銀短観の概要をおさらいしますと、大企業製造業の業況判断(業況判断は、「良い」(回答社数構成比)-「悪い」(回答社数構成比))は、6月の+4から9月は+12に大幅に改善し、大企業非製造業の業況判断も+12から+14に改善しました。その他、中堅企業、中小企業の製造業、非製造業のいずれにおいても、9月の業況は6月の業況よりも改善していますので、全般的には、企業の経営状況は改善を続けているという理解になります。
では、気にかかる点はどこかというと、まずは、業況判断の先行きがほぼ横ばいになり、年末に向けて業況の改善が一時休止する可能性が示唆されてきたことです。具体的には、大企業製造業の先行きが、9月の+12から1ポイントの下落の+11に、また、大企業非製造業では、9月の+14が変わらずの+14といった具合です。過去と比較しても、かなり高い水準にまで上昇してきていますので、横ばいへの移行も不自然な動きとは言い切れない面もありますが、景況感の改善の裾野があまり拡がらなくなってきていることの表れかもしれませんので、注意する必要があります。

また、経常利益の増益率が2013年度下期にかけて鈍化していることも気になる点です。例えば、大企業製造業で見ると、2013年上期が44.4%の増益になっているのに対して、下期の増益率は9.5%に留まっています。しかも、修正率も上期の+15.1%に対して、下期は+2.5%と限定的です。このような数字になった理由は様々挙げられていますが、円安の増益効果がほぼ今年度の上半期に表れてしまい、下半期における増益要因が見えてこないという事情もあるようです。

そして、もう一つが設備投資です。例年、大企業では、年度の中頃から後半にかけて上方修正が鈍化する傾向が見られますが、9月の数字を見ると、今年も、ほぼそれに沿った動きになっています。このところ設備投資の回復を示唆するような経済指標が出ていたため、一部では期待が高まっていたようですが、若干、失望を誘うような内容になってしまったきらいがあります。

このような点が気にはなりますが、中堅、中小企業の製造業では先行きも含め業況の改善が想定されていること、製商品・サービス需給も引き続き改善が予想されていること、販売価格の上昇が中小企業中心に持続する見込みであること等、全体としては好調が維持されていますので、アベノミクスの政策が本格化する年度後半に期待したいと思います。

コラム執筆:
鈴木英典(すずき・ひでのり)

JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社

投資戦略ソリューション室長

JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」https://www.jpmorganasset.co.jp/wps/portal/Column/Indexや「資産運用の井戸端トーク」https://www.jpmorganasset.co.jp/jpec/ja/promotion/column/index.htmlを執筆。

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