第328回 珍現象!!長期実質マイナス金利の効力!! (JPモルガン・アセット・マネジメント)

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第328回 珍現象!!長期実質マイナス金利の効力!! (JPモルガン・アセット・マネジメント)


<質問>

黒田日銀総裁が異次元の金融緩和に踏み切って半年、漸く様々な物価が上がり始めたようですが、今、物価は、実際に上がり始めているのでしょうか?また、また、それは金融市場や経済成長に、どのように影響する可能性があるのでしょうか?

<回答>

ご質問いただき、誠にありがとうございます。今回はJPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。

まず、物価の状況ですが、全国消費者物価指数(除く生鮮食品)は8月に、ついに前年比で+0.8%まで上昇、日銀が目標としている2%には及ばないものの、1年前の-0.3%と比較すると1.1%も上昇したことになります。つまり、エネルギー価格の上昇という「助け船」はあったものの、これまでのところ日銀が目指しているデフレ脱却は、概ね順調に進んでいると考えられます。

さて、その影響ですが、ここでは実質金利という考え方を紹介します。実質金利とは、表面的な金利(これを名目金利と呼びますが)から物価上昇率を差し引いた金利のことですが、これは、物価変動の影響を除いた、実際に正味で得られる収益を意味します。実は、上述した最近の物価の上昇に加えて、長期金利が9月に入って0.6%台に低下したことによって、今、この実質長期金利がマイナスになるという極めて珍しい現象が起きています。どれくらい珍しいかというと、マイナスの実質長期金利という珍現象は、日本では、消費税率の影響を受けた期間を除くと、1970年代の石油ショック時やリーマンショック時といった異常事態でしか、概ね発生していません。

そして、この異常事態で発生するマイナス実質金利には、強い景気刺激効果、あるいは、経済成長促進効果があるといわれています。それは、実質金利がマイナスということは、金利よりも物価上昇率の方が高いということ、つまり、債券等で運用していても物価上昇率に負けてしまうということですから、お金を持っている人には、早めに消費してしまうか、さもなければ、株式や不動産といった物価上昇率以上の収益が期待できる資産に投資するかという方向への非常に強い誘因となるわけです。また、お金を借りる側から見ても、実質的な金利負担の大幅な低下を意味し、その結果、新規の投資への大きなインセンティブになる訳です。

実際、米国ででは、リーマンショッ後の2011年から2012年にかけての2年弱の期間、量的緩和により、実質長期金利が1~2%もマイナスになりましたが、このようなかなり深い実質長期マイナス金利が、相当の期間継続したことが景気刺激策として奏功し、米国経済が回復への動きを強めたとも言われています。このような効果が期待できる実質長期マイナス金利ですから、日本でも、長期間継続すれば、大きな経済成長促進効果が享受できる可能性があります。引き続き、日銀の異次元緩和政策に期待したいところです。

コラム執筆:
鈴木英典(すずき・ひでのり)

JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社

投資戦略ソリューション室長

JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」https://www.jpmorganasset.co.jp/wps/portal/Column/Indexや「資産運用の井戸端トーク」https://www.jpmorganasset.co.jp/jpec/ja/promotion/column/index.htmlを執筆。

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