第331回 円安・ドル高トレンド到来!米国国債への投資のポイントは?

今知りたい!投資の悩みやお金に関する質問に資産運用の熟練講師がお応えします。

第331回 円安・ドル高トレンド到来!米国国債への投資のポイントは?

<質問>

円安・ドル高トレンドに伴い、米国国債への投資を検討しています。日本の個人向け国債との違いや種類、ポイントについて教えていただけますか?

<回答>

円安・ドル高を享受しようと、米国国債への投資をご検討されている方は多いと思いますが、期待通りに為替が円安になって円に戻そうとした時に債券価格が下がってしまっていると円安・ドル高のリターンを十分に得ることができません。

例えば1ドル=100円の時に10,000円を100ドルに換えて、100ドルの米国国債を買ったとします。もし1ドル=110円となった場合、債券価格が100ドルのままであれば100ドル×110円=11,000円となり、10%のリターンを得ることができます。しかし、もし1ドル=110円となった時に債券価格が90ドルに値下がりしていれば90ドル×110円=9,900円となり、せっかく10%も円安ドル高が進んだのに、マイナスのリターンとなってしまいます。米国国債がそこまで値下がりするのか、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、修正デュレーションが9の10年債を買ったとすると、利回りが1%上昇すれば債券価格は9%下落、2%上昇すれば18%下落します。今年5月に発行された米国10年国債は、100ドルで発行されたものが3か月後の8月には92ドルまで下落しました。

米国債の利回りは80年代初頭の15%台から昨年7月に記録した1.38%まで30年に渡って下がり続け、過去200年間の最低水準で推移しています。つまり、過去30年間米国債の価格は大きな下落をせずに済んできました。しかし、こうした状況は大きく変わろうとしています。昨年7月からの米国債の利回り上昇幅はわずかに1%ですが、今後米国債利回りは大きく上昇(債券価格は下落)する可能性があります。

一般に国の経済が好調な時には国債の利回りは高水準になる傾向があります。また、ギリシャのように財政の悪い国の国債の利回りも別の意味で高水準になる傾向があります。今、米国は財政状態が悪い状態で景気回復をし始めており、米国債利回りは上昇しやすい状態にあります。また、金融緩和策はインフレ圧力をかけて国債利回りを上昇させやすい特徴があります。こうした状況の中で米国国債の利回りが低下し、低水準を維持してきた最大の要因はFRBによる米国国債の買い支え、量的緩和(QE)です。今後米国が量的緩和をストップすれば米国国債を買い支えてきた最大の買い手が買わなくなることになり、米国国債の価格が下落し利回りが上昇する、というのが市場関係者の共通認識です。

もちろん、米国債利回りが上昇すれば債券価格の下落は米国債だけにはとどまらず、あらゆる米ドル建ての債券の価格が低下することになります(十分すぎるほどの上乗せ金利が乗っている債券であればその上乗せ金利がクッションになってくれる可能性はあります。)。米国債をはじめとする米ドル建ての債券に投資して円安ドル高メリットを享受しようとお考えになっている方はこの点を十分に考慮する必要があると思います。

コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

マネックスからのご留意事項

「お金の相談室」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧