第336回 2014年日米市場の動きを占う!?

今知りたい!投資の悩みやお金に関する質問に資産運用の熟練講師がお応えします。

第336回 2014年日米市場の動きを占う!?

<質問>

2014年、日本と米国、それぞれの市場の動きを占ううえでの注目材料はなんでしょうか。また、年前半の米国経済について注目のイベントスケジュールがあれば教えて下さい。

<回答>

まずは中長期的な大きな流れの中での現状を把握することが重要かと思います。日本も米国も構造的な財政問題を抱えているのは共通であり、これは決して一時的な問題ではなく、今後長期間に渡る問題です。このため、両国とも財政政策(減税や公共事業など)をとることが難しく(逆に増税のニーズのほうがあり)、金融政策に頼らざるを得なく、その金融政策も金利調節ができずに量的緩和によって行っているというのが現状です。この量的緩和の状態としては日本はこれから本格化、一方の米国は反対に縮小の方向と異なります。一般に金融緩和はインフレ率を底上げし、国債の利回りの上昇圧力を生みますが、量的緩和の実行手段が国債の買い入れであるために国債価格が高めに維持されて、利回りが低く維持されるというのが現実です。こうしたことから量的緩和の出口の議論が進展し始めて米国債の利回りが上昇を始めるというのはごく自然なことのように思えます。一方の日本のほうでは量的緩和が継続され、国債の利回りは低位安定することが考えられます。

日本も米国も、市場の動きを占うにはまずはこうした構造下での金融政策の影響を念頭に考えていくことが重要かと思います。緩和的な金融政策をとるねらいはもちろん景気刺激・浮揚ですが、その副作用で株高や通貨安、物価上昇などを引き起こします。日本株が割高だ、行き過ぎだと言われながら2013年に年初来高値を更新し続けたのも、背景に金融緩和という強烈な後押しがあったことを鑑みればうなずけます。あるいは2007年に5%を超えていた政策金利を0.25%まで利下げし、更に空前規模の量的緩和を行った米国の金融緩和を振り返れば、2007年の1ドル=120円から2012年の80円までドル安円高が進行したこと、また、その後2012年後半以降の日本の量的緩和議論の進展と実行により2012年の1ドル=80円から2013年の1ドル=100円まで円高ドル安が進行したこともうなずけます。そして、量的緩和を行うことで国債の利回りが低く抑えられることを考えれば、米国債利回りの上昇と日本国債利回りの低位安定もうなずけます。

あとは、低水準の実質成長率下で税収を増やし、GDP比の政府債務を上げにくくするために、インフレ率を高めに保って名目成長率を高くすれば、税収がインフレでかさ上げされ、GDPもインフレでかさ上げされてGDP比の政府債務を減らすことができます。こうした名目成長率を高めに保つニーズが日本と米国の政府にあることも中長期的・構造的問題として念頭においておきたいところです。

最後に年前半の米国経済の注目スケジュールですが、金融政策の方向性と財政問題が一番重要ですので、金融政策を決定する毎月のFOMCに加え、1月末でバーナンキ議長の任期満了とイエレン議長の就任は大きなイベントの1つと言えるのではないでしょうか。そして、2月7日には、2013年10月に問題となった米国の公的債務上限引き上げの期限がきます。これも市場の注目を集めるニュースとなることでしょう。


コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

マネックスからのご留意事項

「お金の相談室」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧