第344回 はじめての株式投資信託

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第344回 はじめての株式投資信託

<質問>

はじめて株式に投資するファンドに投資してみようと思いますが、選び方を教えてください。

<回答>

株式投資のリターンは基本的に1)キャピタルゲイン(売値と買値の差による利益)2)インカムゲイン(配当収入による利益)3)為替差益(為替取引が絡む場合の売値と買値の差による利益)の3つです。

1)のキャピタルゲインは、円建ての株であれば1,000円で買った株を1,500円売れば500円のキャピタルゲインが発生し、米ドル建てであれば、10ドルで買った株を15ドルで売れば5ドルのキャピタルゲインが発生します。途中でどれだけ上がっていても、逆にどれだけ下がっていても、損益は買値と売値の2つの値段の差のみで決まることを忘れてはいけません。
2)のインカムゲインは、企業が毎年稼いだ利益の一部を配当金として還元してくれるお金がたまっていくものが積み上がっていくものです。

3)の為替差益は円建て以外の株式に投資した場合に発生し、1ドル=100円の時に1,000円で10ドルを買って10ドルの株を買い、株を買った時と同じ10ドルで売却しても、その時の為替レートが1ドル=120円になっていてこのレートで円に戻せば10ドル×120円=1,200円で200円の利益が発生します。これが為替差益です。10ドルで買った株が11ドルになっていても1ドル=90円になっていれば1,000円で買った株が990円になってしまう、10ドルの株が20ドルになっていれば1ドル=90円でも1,800円となる、また、これらの逆も然り、ということを覚えておきましょう。為替も途中の変動は関係なく、あくまで買った時と売った時の2つの値段のみで決まります。

1)のキャピタルゲインはPERを使って考えるとわかりやすくなります。たとえば1,000円の株の1株あたり利益が100円だと、PERは10倍ということになります。株価が2,000円に上がることを期待するならば、PERは10倍のまま1株あたり利益が200円になるか、1株あたり利益は100円のままPERが20倍になるか、あるいはその複合ということになります。中長期的に投資をしてリターンを得ようとするならばやはり基本は1株あたり利益が増えることに期待したいものです。

2)のインカムゲインというのは一見地味ですが、期間が長くなるほどじわじわと効いてきます。例えば配当利回り3%の株に投資し、その後10年間毎年3%の配当を受け取ることができたとすると、株価が全く上昇せずに同じ値段であっても、複利にならなくても、そのリターンは30%にもなります。外貨建ての株式に投資して10年後の為替レートが多少円高になっていたとしても、配当によるインカムゲインが大きなクッションとなってくれて、リターンを確保するのに一役かってくれます。

3)為替の変動幅は非常に大きく、短期的にはインカムゲインよりも遥かに大きく、場合によっては株価の動きよりも大きくなってしまうこともありますが、為替レートというのは行ったり来たりを繰り返すもので、中長期的に投資を行った場合のスタートとエンドの間の為替レートの差というのは意外と小さいものです。中長期の投資を行う場合には、年率1%の為替のリターンが出れば上出来すぎる、というのが実情で、年率2%の為替のリターンを実現できるのは非常に稀です。もちろん、為替のリターンも上乗せされるのに越したことはありませんが、トントンでもいいや、くらいに思っておくと良いと思います。

以上から、まずは1)と2)でしっかりと株のリターンを稼ぐことが重要で、外貨建てのものでも、まずは100ドルの株が150ドルになること、30ドルのインカムゲインを積み上げ、多少為替で負けてもトータルリターンをプラスにできるくらいの株のリターンを積み上げたいものです。そうなると、企業の稼ぐ利益が非常に重要になってきます。投資先企業の稼ぐ利益が大きく増えれば①のキャピタルゲインはPERが上がらずとも期待でき、利益の一部が還元される②のインカムゲインも大きくなることが期待できます。

自分が、これから先稼ぐ利益が大きく伸びていくと期待できるような国・地域・分野・業種・テーマのものを選ぶのに十分な時間をかけましょう。投資のリターンを大きく左右するのはこうした投資対象によるもので、同じ投資対象でのファンド毎の差はこれと比べれば小さいものです。まずは投資対象を選ぶことに集中すると良いと思います。そのうえで、その投資対象に投資するファンドの中から自分のこだわりポイントに合ったものを選ぶようにするといいでしょう。

コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

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