第347回 ワールドカップも大詰め!投資先としてのブラジルは?

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第347回 ワールドカップも大詰め!投資先としてのブラジルは?

<質問>

ワールドカップで注目されたブラジル。投資先としてはどうでしょうか。ご意見をいただけますでしょうか。

<回答>

まず、IMFによるブラジルの今後の実質成長率予想はこのようになっています。
2014年:1.824%

2015年:2.651%

2016年:3.004%

2017年:3.145%

2018年:3.342%

2019年:3.514%

これは新興国全体の数字を下回っており、新興国の中では成長率は低い部類に入ります。IMFによる新興国全体の実質成長率予想は以下の通りです。

2014年:4.904%

2015年:5.320%

2016年:5.384%

2017年:5.352%

2018年:5.367%

2019年:5.345%

一方で、日本の成長率と比べればずっと高くなっています。IMFによる日本の実質成長率予想は以下の通りです。

2014年:1.351%

2015年:0.965%

2016年:0.670%

2017年:0.992%

2018年:1.006%

2019年:1.125%

ブラジルの成長率が新興国全体の成長率を下回ってしまうのは、ブラジルの1人当りGDPが既に1万ドルを超えていることが大きな要因の1つだと思います(2014年末予想で11,080ドル、以下いずれも2014年予想)。ブラジルのように1人当りGDPが既に1万ドルを超えている国が1人当りGDPを2倍にすることは容易ではありません。ちなみに先進国の1人当りGDPは日本が38,142ドル、ギリシャが22,594ドル、ポルトガルが21,766ドル、ですから、ブラジルの1人当りGDPが2倍になれば、ギリシャやポルトガルよりも高い経済効率を持つことになります。これを達成するにはかなりの時間が必要です。一方、他の新興国、たとえばインドの1人当りGDPは1,584ドルであり、ベトナムは2,073ドル、インドネシアは3,417ドル、しかありません。これらの国が1人当りGDPを2倍にすることはブラジルが1人当りGDPを2倍にするよりも容易です。


GDPというのは【人口×1人当りGDP】です。1人当りGDPが2倍になれば人口が全く増えなくてもGDPは2倍になります。GDPを2倍にすればその成長率は100%となり、それを何年で実現するかが1年当たりの成長率ということになります。このため、1人当りGDPが低い国は高い成長率を記録しやすく、1人当りGDPが高い国は高い成長率を記録しにくいのです。ブラジルは既にある程度の経済効率を持っているため、他のまだまだ経済効率の点でブラジルに遠く及ばない国々と比べると成長率は低くなってしまうのです。


という経済の見通しのうえでお話しさせていただくと、ブラジルはワクワクするほど高い成長率を期待して投資する国ではないということです。では、ブラジルが投資先として魅力的ではないかと言うと、そんなことはありません。ブラジルの実質金利(金利からインフレ率を差し引いた実質的にお金がどのくらい増えるのかを示すもの)は非常に高く、債券の投資家にとってはブラジルの債券は非常に魅力的でしょう。株式も、インフレ率を加味した名目成長率を考えれば、相応のパフォーマンスは期待できるのでしょう。ただ、だからと言って、ブラジルに一点張りで賭けてよいほどのレベルかと言えば、それでは見合わないかもしれません。投資先の一部として上手に活用する分には充分使い道がある、というのが妥当な表現でしょうか。


いずれにせよ、肝に銘じておかなくてはならないのは、国は数か月で大きく成長したりはしないということです。新興国の成長に期待して投資してもたかだか数か月後の上がった下がったで良い悪いを判断する人が多いですが、数か月というのは新興国の成長を期待する期間や、その恩恵を受けた投資結果を期待する期間としてはあまりに短すぎます。子供の成長を見守るくらいのつもりで、5年10年という単位で見守る心づもりが必要かと思います。


コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

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