第355回 投資信託・ETF、長期保有のススメ。

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第355回 投資信託・ETF、長期保有のススメ。

<質問>

日経平均やTOPIXに連動する投資信託やETFを長期保有したいのですが、どのようなタイミングで購入すればよいでしょうか。参考となる指標やイベントなどありましたらあわせて教えてください。

<回答>

まず、短期的な価格の上下動の中で細かく売買をして利益を積み上げていこうとする「投機」と、中長期的な資産のリターンを得ようとする「投資」は全くアプローチが異なることを認識しなくてはなりません。長期投資をするなら投資のタイミングにあまりこだわる必要はないのではないでしょうか。強いて言うなら投資タイミングを分散することをおすすめするくらいでしょうか。


例えばこんなことを考えてみてください。日経平均株価は日々変動しますが、日々の変動は日経平均株価に組み入れられている企業の業績の日々の変動とどの程度リンクしているでしょうか。おそらくあまり高い関連性は見られないはずです。企業の業績というのは株価のように刻一刻と目まぐるしく変動したりはしません。そもそもそんなに短期間に企業は業績を発表するものではありませんしね。ましてや、200銘柄以上で構成される日経平均株価や約1,800銘柄で構成されるTOPIXの組み入れ企業全体の業績の変化ということであればなおのことです。1日や1か月といった短期間に、多くの会社の業績が一気に10%、20%と増減したりはしないのです。もう少し長くして1年くらいの期間で考えても、先進国の大企業の平均であれば利益が20%も増えたり減ったりすれば大きな変動といえるほうで、通常は1年くらいの期間で見てもそれよりも小さな変動幅にとどまります。それでも株価は変動します。時には、1日で3%くらい動いてみたり、1年間に30%上がってみたり、様々なニュースに反応し、投資家心理が強気になったり弱気になったりして株価は上下動します。


話をシンプルにするためにインカムゲインを考えずにキャピタルゲインだけで考えてみましょう。もし日経平均が15,000円の時にPERが15倍だったとしたら、それは組み入れ企業の平均EPS(1株当たり利益)が1,000円であることを意味します。ここから1年後に日経平均が20,000円になるとしたらどういうケースが考えられるでしょうか。

1) EPSが1年の間に平均33%も伸びて1,333円になり、PERが15倍のままだとしたら日経平均株価は20,000円になります。

2) EPSは1,000円のままでもPERが20倍になれば日経平均は20,000円になります。もしくは両者の複合で双方とも伸びるパターンや、片方の伸び幅がもう一方の減少幅を大きく上回るパターンも考えられるでしょう。

では、先ほどの日経平均が15,000円の時に「日経平均の組み入れ銘柄のEPSは今後1年で平均5%の成長にとどまるが、1年後の日経平均株価は20,000円になると考える」とすると、どういうことになるでしょうか。簡単ですね。1,000円のEPSは5%成長であれば1,050円にしかならないのですから、日経平均が20,000円になるためには20,000円÷1,050円=約19倍で、15倍のPERが19倍にならなくてはならないことになります。言い換えれば、EPSが変化しないくらいの短期間に20%上がることに期待するなら、PERが20%上がることに期待するのと同義ということになります。

一方、企業の利益というのは短期間ではさほど大きく変わらなくても、5年、10年といった中長期的な視点で考えてみると大きな変化が十分起こりえます。たとえ年率5%成長だったとしても、それが10年続けば10年後には1,000円のEPSは約1,630円にもなります。さきほどのケースに当てはめて考えれば、たとえPERが全く上がらず15倍のままだったとしてもEPSが1,000円から1,630円になれば日経平均株価は15,000円から24,450円にまで上がります。これこそが資産の本源的なリターンであり、これを中長期的にとらえようとするのが投資です。


少しでも安く買いたい、と考えるのは自然なことですが、今日買うべきか明日買うべきかは今日と明日の安いほうで買うべき → 今日と明日でEPSが変わらないのなら今日と明日でPERの低いほうで取引すべき → 今日と明日のどちらのほうが投資家が強気なのか、明日どんなニュースが出てくるのか、は分からないし、今日と明日のどちらのPERが低いかは分からない → 今日と明日でどちらのほうが安く買えるか考えるのはやめよう、EPSが1,000円の時にPER15倍くらいで買ってEPSが10年で1,500とか2,000になることに期待しよう、こんな風に考えてみると良いのではないでしょうか。

コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

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◆8月実施「MONEX 個人投資家サーベイ」子供へのマネー・投資教育、約7割が
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http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/invest/survey.htm

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