第356回 中長期投資にリバランスは必要?!

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第356回 中長期投資にリバランスは必要?!

<質問>

中長期投資を投資方針とし、最低でも10~20年程度の期間で考え、「日本株」「先進国株」「新興国株」のインデックス投信で運用を行っていますが、リバランスのタイミングについてアドバイスをいただきたいです。

<回答>

私は機械的なリバランス、定期的なリバランスを行うことがさほど有効だと考えていません。例えば「日本株」と「先進国株」と「新興国株」に1/3の配分をすることにしたとしましょう。それぞれの現在のEPS(1株当たり利益)を100、PERを15倍、価格を1,500、EPSの年間成長率を日本株:5%、先進国株10%、新興国株15%と仮定して考えてみます。

【スタート時点】
価格の合計は4,500です。

日本株:EPS100、PER15倍、価格1,500 (全体比33.3%)

先進国株:EPS100、PER15倍、価格1,500 (全体比33.3%)

新興国株:EPS100、PER15倍、価格1,500 (全体比33.3%)

【1年後】
3つともEPSは予想通りに想定通りに増え、PERは変化せず、こんな風に変化していたとします。価格の合計は4,950です。

日本株:EPS105、PER15倍、価格1,575 (全体比31.8%)

先進国株:EPS110、PER15倍、価格1,650 (全体比33.3%)

新興国株:EPS115、PER15倍、価格1,725 (全体比34.8%)

ここで機械的なリバランスをするならば、価格が上がったことで比率の高まってしまった新興国株を売却し、比率の下がった日本株を買うことになります。もちろん、新興国株のPERが上昇して割高になったのであれば、新興国株を売却して割高になっていない日本株にその分を振り向けるというのは合理的です。しかし、株価の上昇は必ずしも割高になるものではありません。PERが全く上昇せずに、あるいは下落しながら株価が上昇することもあるのです。この場合、PERは全く変化していないのに、単に価格が上昇して構成比が高まったという理由だけで売却をすることになってしまうのです。

3つの資産に全体の4,950を均等に振り向けるとすると1,650ずつの配分になり、本来新興国株は1,725のはずが、少ない状態で次年度を迎えることになります。次の年に新興国株のリターンが15%だったとしたら、リバランスした場合の新興国株のリターンは248、リバランスした場合は259となります。この差は時間が経つほどに積み上がっていき、10年後の投資成果にはこのくらいの差がつきます。


1年ごとに3資産に均等になるようにリバランスした場合、3資産合計:11,672
リバランスしなかった場合、3資産合計:13,229


さらには、こまめに売却をしていくことで、こまめに納税をしていくことになり、中長期投資による税の繰り延べ効果も薄くなってしまいます。機械的なリバランスは、やらない理由がない、いいことばかり、というわけではないのです。リバランスは、現在の配分が現在の自分の考えるベストな配分と、許容範囲を超えて異なってしまっていると考えた時に行えばいいのではないでしょうか。もちろん、自分なりの最適配分も、それぞれの資産に対する見通しも、時間が経てば変わっていくでしょうから、その時その時の自分の理想的な配分に基づき行っていけばいのではないかと考えます。

コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

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