第358回 四季報の見方。

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第358回 四季報の見方。

<質問>

四季報の数字の見方で、単体の業績がマイナスで、連結の業績はプラスになっている会社、というのは、投資先としてどう思われますか

<回答>

企業の業績を見ていると、単体の業績がマイナス(赤字)で、連結がプラス(黒字)というケースは少なからずあります。これがどういうことを示しているかと言えば、親会社の赤字を埋めて余りある収益を稼ぐことのできている子会社を持っているということです。


考え方はいろいろあると思いますが、私はこうしたケースというのは特に大きなプラスとも大きなマイナスともとらえません。自分が投資している親のほうが赤字では話にならないじゃないか、親会社こそが本業でその本業が赤字ではだめじゃないか、というご意見もあろうかと思いますが、しかし「本業」が少しずつ時代や環境の変化に応じて変わっていくということは十分あり得ます。たとえばエジソンが設立した照明器具会社からスタートしたGEという会社がありますが、照明器具だけを作っていたところから、少しずつ事業を拡大して、様々な事業を展開する今日のGEのようなコングロマリットになっていく、そのこと自体は悪いことではないと思います。そうした過程ですべてを1つの会社内でやっていった場合、今日のGEが行っているすべての事業をおおもとの照明器具の会社内でやっていった場合、「本業」の照明器具の部分が赤字で、それ以外の部門が黒字、結果的に本業以外の業務の黒字が本業の赤字を補う格好で全体としては黒字、こういうことは十分あり得ます。

これが、たとえば銀行業など、照明器具の会社が兼業できないような業務を新たに始めるために、それを社内で行わずに子会社を作って行い、結果としてそれが連結対象子会社となり、単体では赤字、連結では黒字、という構造になっているとしたなら、それは問題でしょうか。

結局のところ、連結決算ベースで見た業績がどうなのか、というところが問題なのではないかと思います。10の事業を1社の中でやっていて、本業1つだけが赤字で残りの9の事業がすべて黒字で本業の赤字を補って余りあるというケースと、本業をやっている親会社だけが赤字で、本業以外をやっている9の子会社が黒字で親会社の本業の赤字を補って余りある、というのに大きな差はないのでなないでしょうか。そのうえで、不採算の部門や事業をどう考えていくか、それがかつて本業だったものや、創業者の強い思い入れや信念や社会的意義などでたとえ赤字だったとしても他の事業でカバーしていき続けていく、といったような話はこれらとは別の、切り離して考えるべきものです。ご質問の件は、それ自体が大きく投資判断に影響するようなものではないと考えます。


コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

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