第359回 衆議院選挙が与える市場への影響

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第359回 衆議院選挙が与える市場への影響

<質問>

年末付近に行われる衆議院選挙が与える市場への影響についてどのように考えますか。

<回答>

代表的な日本株式、日本国債(長期金利)、為替(ドル/円)の3つについて考えてみたいと思いますが、日本株式は後回しにしてまずは日本国債から。インフレ率を上げるような政策を掲げる自民党が勝てば本来的には日本国債の利回り上昇要因となりますが、一方でインフレ実現のために量的緩和(日銀による国債の買い入れ)をすること、そしてそれに追随する動きで日本国債を買う動きが強まり国債利回りが低下してしまうという側面もあります。安倍政権誕生以降は後者の色彩が強く市場には出ています。一方、長期的に考えれば、日本の財政状態は構造的に悪く、構造的な改革策がうたれなければ日本の財政は悪化の一途で長期的な国債利回り上昇圧力を抱えることになります。

為替について考えると、ドル/円レートは米国の史上空前の金融緩和策から引き締め路線への反転(ドル高要因)と、日本の金融緩和の推進(円安要因)により、70円台後半から120円近くまでドル高円安が進んできましたが、金融緩和を続けていくことが確認されれば(もちろん、金融政策は政府が行うものではなく、「独立した」中央銀行である日銀が行うものですが)、円安要因となります。

最後に、後回しにした日本株式についてですが、たとえば今の日経平均株価は17,000円台中盤、PERは20倍程度で、計算しやすいように株価18,000円でPERが20倍の状況として考えてみましょう。株価18,000円でPERが20倍であればEPS(1株当たり利益)は株価18,000円÷20=900円ということになります。選挙後にこのEPSが短期的に大きく変化することは考えにくいはずです。たとえば2ヵ月後、EPSが900のまま変わらないのなら、PERが18倍に下がっていれば株価は16,200円、PERが20倍のままであれば株価は18,000円のまま、PERが22倍に上がっていれば19,800円、ということになります。つまり、投資家心理が今よりも強気になってPERが上がるのか、弱気になってPERが下がるのか、によって上下が決まることになります。もちろん、投資家心理は選挙結果だけで決まるわけではなく、世界の経済金融情勢のさまざまな要因の影響を受けることも忘れてはいけません。一方、中長期的に考えれば、株のリターンはEPSの伸びとPERの変化によるキャピタルゲインと、配当によるインカムゲインの合計となりますが、前者はPERが変化をしなくても中長期の時を経て日本企業のEPSが成長すればプラスとなり、当然ながらそれは後者のインカムゲインにも好影響を及ぼします。こうして考えると日本企業のEPSが伸びるような政策が期待できるような選挙結果となれば、日本株式の中長期的なパフォーマンスを押し上げてくれることが期待できます。このように整理するとよいのではないでしょうか。

コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

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