第361回 2015年投資を始めてみたい!投資をする意義って何だろう?

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第361回 2015年投資を始めてみたい!投資をする意義って何だろう?

<質問>

NISAも2年目に入り、日経平均株価年内2万円到達と予想する方も増えたことから、投資に興味を持つ個人が益々増えるのではないでしょうか。投資をする人が増えると、どのように社会・経済が変化するのですか。投資をする意義について改めて教えてください。


<回答>

この場合の投資と対をなすのは預金ということになると思います。投資をしない=預金のみなのか、投資をするのか、ということは社会的・経済的にどのような意味があるのかを説明するのに、間接金融と直接金融という概念をお話しする必要があります。間接金融と直接金融の違いは、個人などがもっているお金が、資金を必要としている企業などに「間接的に」届くのか、「直接的に」届くのか、の違いです。更に言えば、銀行を通して「間接的に」お金が届くのか、銀行を通さずに「直接的に」お金が届くのかの違いであり、どの企業にお金を届けるのかを「銀行が選ぶ」のか「お金の出し手が選ぶ」のかの違いです。


銀行に預金されたお金は銀行が企業などにお金を貸したり、場合によっては株式を購入したりして、世の中のお金を必要としているところへ届けられます。銀行は預金者に確実にお金を返すために、お金を返せなくなったりすることがないようにリスクをできるだけ抑えてお金の届け先を決めます。すると、お金を必要としている企業などの中にはお金を貸してもらえなかったり、株式を購入してもらえなかったり、というところが出てきてしまいます。また、必要なお金の全額を調達できず、必要な資金の一部しか調達できないというケースも出てきてしまいます。

一方、投資、直接金融の場合は間に銀行が入りません。お金の出し手のお金が間に銀行を介すことなく企業に届けられます。そのため、お金の出し手=投資家の判断で、銀行ではとても融資や投資のできないケースでも、資金を必要としている企業などに資金を出すことができます。直接金融が十分発達していない場合、創業まもない企業や、リスクの高いビジネスに果敢に挑戦しようという企業、新しいことに取り組もうとする企業、などにお金がまわりません。

日本の個人金融資産は1,654兆円(※)。そのうち現金・預金は870兆円、保険が444兆円でこの2つで79%を占めます。一方、国内銀行が持つ金融資産は1,033兆円でそのうち156兆円(15%)が国債を中心とした国・地方への貸し出し、504兆円(49%)は銀行がリスクをとれると判断した企業などへの貸し出しとなっています。保険会社が持つ金融資産は437兆円で、そのうち234兆円(53%)が国・地方への貸し出し、47兆円(11%)が保険会社がリスクをとれると判断した企業などへの貸し出しです。こうした、日本の個人が約8割の金融資産をおく銀行や保険会社を通じ、「間接的に」届けられる先は、銀行や保険会社の判断を通じて行われるものであり、これだけではチャレンジ精神にあふれ、大きな夢を抱き、資金を必要としている企業などに十分な資金を行き渡らせることは難しいのです。一方、個人金融資産のうち、株式になっているのはわずか9%の156兆円、投資信託になっているのはたった5%の86兆円です。

投資をする人が増え、投資にまわる資金が増えるということは、資金を必要とするところや新たなチャレンジをしようとする法人・個人にお金を届け、経済活動を活発にし、ひいてはこの国が戦後に蓄積したストックを活用して富を増やしたり海外から必要なものを買うための富を維持したりするために大きな意義があります。個人的には、日本における投資の普及というのは、潜在成長率が極めて低いこの国の生命線と言っても良いものだと考えます。

(※)2014年7-9月速報値ベース 日銀資金循環統計より


コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

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