第367回 退職後の生活資金を作るため、リスクを抑えて安定したリターンを得たいです。

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第367回 退職後の生活資金を作るため、リスクを抑えて安定したリターンを得たいです。

<質問>

退職後に育てた資産を少しずつ崩して老後の生活資金を作る際、リスクを抑えて、安定したリターンを得たいと考えます。その場合のおすすめの金融商品はありますか?巷ではETFやREITのインカムゲインに注目した投資も一部話題になっているようですが。

<回答>

まず、リスクについてお話ししたいと思いますが、リスクというのは種類と大きさの2つの点で考える必要があります。リスクの種類は投資信託の販売用資料や目論見書などで容易に確認できますが、リスクの大きさというのはあまり表記されていません。リスクの大きさというのは平たく言えば値動きの大きさのことで、

① 日々の値動きの大きさ

② 数ヶ月~1年程度でどのくらいの下落を覚悟しておく必要があるか

③ 最大でどのくらいの下落があり得るか


の3つくらいで考えると良いと思います。

たとえば、

A:先進国を中心とした世界の国債に為替リスクをとって分散投資するファンド
B:日本株に分散投資するファンド

の2つで考えてみましょう。

①はAが概ね上下2~3%以内で通常は上下1~2%以内、Bは概ね上下5~7%以内で通常は上下2~4%以内程度です。②はAが10~20%程度、Bは20~40%程度、③はAが20~30%程度、Bは40~60%程度です。これらを計測するには各資産の値動きの統計をとって調べる必要がありますが、幸いなことに①~③は概ね同じような傾向を示すため、一番簡単な③をチェックするだけでも各資産が持つリスクの大きさを把握することができます。③をチェックするにはリーマン・ショック時に最大どれくらい下落したのかを調べるだけで済みます。細かい数字でなくても各資産が何割くらい下落したのかを月報などを使って調べることで容易に把握できます。ちなみにAは2割程度、Bは6割程度、豪ドルやブラジルレアルは5割弱、HY債やバンクローンは5割強、新興国株やJ-REITは7割程度、米国REITは8割程度下落しました。

バランスファンドの場合は難しいのですが、通常、バランスファンドの設計時には資産の組み合わせやリスクの種類はもちろんですが、ファンド全体のリスク量を①~③の観点で設定しますので、どのくらいのリスク量をとるタイプなのか販売用資料などに記載されている場合は参考にすると良いでしょう。記載がない場合でもリーマン・ショック前から運用しているファンドであればリーマン・ショック時の下落幅で把握ができます。くれぐれもリーマン・ショック以降の長期間の上げ相場の値動きでリスクを測らないように注意してください。この6年強の間は多くの資産がほとんどリスクを顕在化させずに堅調に推移してきたのですから。

これらのリスクと期待するリターン(インフレ率と同じくらいにして資産が目減りしなければいいと考えるか、インフレ率を上回るリターンを期待して資産を増やしていこうとするか、更に大きく増やしていこうと大きなリターンを期待するのか)のバランスで考えれば良いと思います。

なお、後段についてですが、ETFとREITというのは全く別の概念です。ETFには様々な種類があるため、それこそファンドによってリスク量は千差万別で、債券に投資するETFだけでもものすごいバリエーションがありますし、HY債券のETFと米国国債のETFは並列で考えることができるようなものではありません。インカムゲインに注目するにしても、リスク量に対して適正なインカムゲインが期待できるものと、全く割に合わないものまで混在しているので、利回りだけを見て比較することはおすすめできません。ETFを通じて投資するかどうか以前に、ETFなどのツールを通じて投資する資産がどういうリスクとリターンを持つものなかという点のほうが重要です。

一方のREITというのはそもそもエクイティ(株式、MLP、REITなど)の一種です。ETFの中には債券もエクイティもコモディティもありますが、REITというのはエクイティの中の一種類に過ぎません。インカムゲインに注目して選ぶにしても、とるリスクはエクイティのリスクなので、株式と同様に潰れたらゼロということを忘れてはなりません。また、リーマン・ショック時には各国のREITは6~8割程度下落しました。こうしたリスク量に対してインカムゲインだけではとても割に合いませんから、キャピタルゲインと合わせてトータルリターンで考えるべき資産かと思います。


コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

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