第372回 どうなる!?今後の日本国債展望

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第372回 どうなる!?今後の日本国債展望

<質問>

日本国債の今後の動向についてどう思われますか。

<回答>

大変難しい問題ですが、結論から申し上げると当面、日本国債の利回りは上がりにくい(価格は下がりにくい)と考えます。日本の財政状態は極めて悪く、一方でインフレ率を高める目標を掲げているので、本来はこれらが国債の利回り上昇(価格下落)圧力をかけるのですが、現在はそうした展開になるような状況ではありません。

国債の価格と利回りを決めるのは、国債の売買に参加する人たちの需要と供給のバランスです。こんな利回りはおかしい、構造的にはこうなるはずだ、という人がたくさんいたところで、国債を実際に売買する人たちが行う取引がそうしたものになっていなければ価格や利回りは動きません。日本の財政状態が悪く、大手格付け機関が日本国債の格付けを格下げした、と言ったところで、それでも前日より高い価格(低い利回り)で国債を買う人が山ほどいれば国債の価格は上がり、利回りは下がるのです。

現在の日本国債市場には巨大な買い手がいます。日銀です。
日本国債の残高は1,023兆円(短期証券含む)で、そのうち25%の256兆円を日銀が保有しています。普通の銀行は全部合わせても34%の347兆円、生損保全体で20%の201兆円、世界最大の運用資産規模を誇るGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が60兆円、ですから、日銀が単独で256兆円を保有しているというのがいかに大きいかお分かりになるかと思います。そんな日銀は年間80兆円を目標に毎月日本国債を買い続けています。

これだけ強烈な買い手がいれば価格はそう簡単に下がりません。当然ながらそれを皆わかっているわけですから、それに追随した買いも出てきますし、焦って投げ売りをするようなことは少なくなくなります。安値で売る必要はないのですから。

そしてもう1つは、インフレの見通しです。インフレ率を上げる目標は掲げられているものの、市場は、少なくとも国債の取引に参加している人たちは懐疑的に見ているということです。インフレ率が高くなっていくと考えられていれば国債には高い利回りが要求されますが、今はそうなっていません。

こうした状況下ではすぐに日本国債の利回りが急激に大きく上昇し、価格が大きく下がることは考えにくいと思います。


コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

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