第374回 ITバブル越えを果たした後、どうなる日経平均株価!?

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第374回 ITバブル越えを果たした後、どうなる日経平均株価!?

<質問>

6/24に日経平均がITバブル時に付けた高値(2万 833円)を上回りました。今後どのような展開を予想されますか。

<回答>

日経平均の「今後」を考える時、いろいろなアプローチがあると思いますが、私はいつもPERを考えます。PERは【株価÷1株当たり利益】で、株価は【1株当たり利益×PER】です。つまり、株価の上昇率は【(1+1株当たり利益の上昇率)×(1+PERの変化率)-1】ということになります。株価が上昇するためには1株当たり利益が上昇するか、PERが上昇するか、そのコンビネーションでプラスになるか、のいずれかが必要ということです。

6/24の日経平均株価は20,868円で、会社予想のPERは16.97倍、ということは1株当たり利益は【20,868円÷16.97】で1,230円ということになります。

一方、ITバブル時の2000年4月12日の日経平均株価は20,833円で、この時の会社予想のPERは71.83倍、ということは1株当たり利益は【20,833円÷71.83】で290円だったということになります。

ITバブル時の高値を超えた6/24の日経平均は当時の高値と比較しても+0.168%とプラスになったわけですが、この+0.168%の上昇率は

1株当たり利益の上昇率:1,230÷290-1=<324%>

PERの変化率:16.97÷71.83-1=<-76%>

【(1+<324%>)×(1+<-76%>)-1】=+0.176%

ということになります。(小数点を四捨五入しているため完全一致はしませんが。)

さて、「今後」に何を期待するかですが、PERの上昇に期待するのであれば、「時間」よりも「投資家心理」のほうが重要です。PERは時間が経てば上がるというものではありません。逆に、時間が経たなくても投資家心理がどんどん強気になっていけば、資金がどんどん流入していけば、短期的に上昇することもあり得ます。1株当たり利益が全く増えなくてもPERが20%上昇すれば株価も20%上昇します。

一方、1株当たり利益の上昇に期待するのであれば「時間」がとても重要です。投資家心理が強気になっても、資金がどんどん流入しても、企業の利益は変わりません。個社であれば利益を短期的に大きく増やすことも可能かもしれませんが、多くの会社の平均、日経平均組み入れの225社の平均が短期的に大きく増えることはあまり期待できません。企業の利益というのは平均してみれば少しずつ、時間をかけて増えていくものなのです(会社勤めをしたことのある方ならお分かりかと思いますが)。たとえ年率5%の成長でも5年経てば28%の上昇、10年経てば63%の上昇になります。1株当たり利益が63%増えればPERが全く変化しなくても株価は63%上昇します。

企業の利益が増えるには短すぎる時間での株価上昇に期待するのであればPERの上昇が必要であり、それを大きく左右するのは投資家心理や資金フローで、投資家心理や資金フローの見通しというのはなかなかたたないものです。半年後の日経平均の予想はこの要素が非常に大きくなります。

中長期の投資家にとって、あるいは中長期的に日経平均がどうなっていくかを考える人にとっては、異常な水準にPERがあるときは別として、PERが全く上昇しなくても利益成長率分は株価は上昇していく、と考えることができます。私はこちらのタイプで、中長期的に利益成長率分程度の日経平均の上昇を期待しています。ITバブルの時の株価を超えたからこれ以上上がらない、とは思いません。


コラム執筆:ジョン太郎


金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

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