第378回 ブラジル・中国・・・ 新興国市場への投資を考える。

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第378回 ブラジル・中国・・・ 新興国市場への投資を考える。

<質問>

新興国市場への投資を考えています。特にブラジル、中国に注目していますが、この2国への投資をどう考えますか?

<回答>

前回お話ししたように、新興国の単一国投資はリスクが高く、それでもポートフォリオ全体のパーツの1つと捉えることができるのであれば、1つのパーツとして使う分にはとても便利なパーツだと思います。全体的に成長率の低い先進国の中でも特に成長率の低い日本に暮らす私たちにとっては、大変ありがたい、魅力的なリスク・リターンを提供してくれるのが新興国市場だと思います。私のポートフォリオには新興国市場は決して欠くことのできないパーツであり、むしろメインとなっています。

さて、ご質問のブラジルと中国についてですが、まず特徴としては両国とも人口が非常に多く(中国は世界1位、ブラジルは5位)、内需にとても強いベースを持っているのが強みです。外需依存の国とはこの点だけでも大きな差があります。中国は一人っ子政策の影響はありますがそれでも人口は増えていますし、増えていく予想ですから、既に人口が減り始めている日本から見れば羨ましい限りです。

国土面積も広く(中国3位、ブラジル5位)、天然資源に恵まれているのも大きな原動力の1つです。例えば中国はアジア最大の産油国であり、中東の国々の中に混ざっても大きな産油量を誇ります。日本のように原油を外国からの輸入に依存している国と違い、自分の国でとれる分は外国から買わなくて済むわけですから、たとえ原油を輸出していなくても、買わなくて済むこと自体が非常に大きなプラスとなります。ブラジルも自国内の原油需要を賄えるくらいの産油量を誇ります。鉄などの他の資源も然りです。

これらのことはあちこちで言われていることで、今さら改めて言うまでもないことですが、一方で認識しておかなくてはならないのは両国とも既に経済効率はかなり高くなってきているということです。中国の1人当たりGDPは2015年末のIMF予想で8,154ドル、ブラジルは9,312ドルです(ちなみに中国は1980年が313ドル、2000年が941ドル、ブラジルは1980年が1,283ドル、2000年が3,789ドル、でした。)。両国とも1人当たりGDPが既に1万ドル近くまで来ています。日本でも33,223ドルですし、スペインは26,517ドル、ポルトガルは18,863ドルですので、ここから先、1人当たりGDPを2倍、3倍と上げていくのはなかなか大変です。1人当たりGDP1,000ドル、つまり国民1人当たりが1年間に稼げるお金が12万円レベルなのを2倍の24万円レベルにすることは、それこそ道路をちょっと整備して今まで1日1往復しかできなかったトラックを2往復できるようにする、停電を少なくして工場の稼働時間を上げる、というようなことでも達成できますが、既に100万円稼げているのを200万円稼げるようにする、というのは大変なのです。

GDPは1人当たりGDP☓人口なので、GDP成長率は(1+1人当たりGDP成長率)☓(1+人口増加率)-1ということになります。人口がどんどん増えて、1人あたりGDPのスタート地点が低いために1人当たりGDPの変化率も大きくなる、という状態のかつての中国やブラジルとは違うのです。1人当たりGDP が1,808ドルのインド、2,233ドルのベトナム、3,037ドルのフィリピン、3,511ドルのインドネシア、よりも成長率が低くて当然で、それでもこれらの国の成長率に匹敵する6%以上の成長を続けている中国は本当に凄いのです。

そして、ベトナムのような国と較べて、金融市場も整備されていて流動性もあって、ということを考えれば、以前と較べて成長率が下がってきたとしても投資魅力はまだまだあると思います。

コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

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