第382回 いざ!新興国投資。経済成長率が見込める国は?

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第382回 いざ!新興国投資。経済成長率が見込める国は?

<質問>

今後、新興国で高い経済成長率が見込める国はどこだと考えますか?

<回答>

まず、「経済が成長する」ということの意味は、「GDP額が増える」ということです。100兆円のGDPが105兆円になることを「経済が成長する」と表現し、この場合GDPが5%増加しているので、「5%経済が成長」と表現します。

ただし、インフレで世の中のものの値段が全体的に上がってしまうことでGDPの額が膨らんだ分は、誰も豊かになりませんし、新たな富が生まれているわけではないので、物価上昇分を差し引いいて考える必要があります。そこで、まず単にGDPがどのくらい増えたのか(名目成長率)を計算し、そこからインフレ率を差し引いて「実質経済成長率」を算出し、通常はこの実質経済成長率で経済成長を考えます。

一方、経済が成長するという概念の基本要素である「GDP」は【1人当たりGDP】☓【人口】です。【1人当たりGDP】が増えなくても【人口】が増えればGDPは増えますし、日本のように【人口】が減っている国では【1人当たりGDP】を増やせなければGDPは減り、マイナスの経済成長率となってしまいます。【1人当たりGDP】は簡単に言えば国民が1人当たり平均でどのくらい稼ぐことができるか、ということです。日本の【1人当たりGDP】は2014年で約436万円。これを2倍にすることができるでしょうか。時間をかければ可能かもしれませんが、短期間で達成するのはかなり困難でしょう。ところが、【1人当たりGDP】が10万円程度の国であれば、2倍にすることは充分達成可能です。例えば、少し交通網が整備されて輸送時間が短縮される、1日のうちで停電している時間が短くなって工場の稼働時間が長くなる、こういったことでも10万円の稼ぎを20万円にすることが可能になります。

【1人当たりGDP】がもう既にかなり高くなっている先進国では、【1人当たりGDP】を大きく増やすことが難しく、まだまだ【1人当たりGDP】が低い新興国では【1人当たりGDP】を大きく増やすことも充分可能で、これだけを考えても先進国より新興国のほうが経済成長率が高い傾向を示すのが頷けるのではないでしょうか。また、【人口】の増加率も先進国より新興国のほうが高いのですから、なおさらです。

IMFが予想する今後5年間の実質経済成長率が高い国の上位の(平均成長率/1人当たりGDP)は、リビア(13.8%/80万円)、モザンビーク(9.2%/8万円)、ブータン(8.6%/33万円)、トルクメニスタン(8.6%/99万円)、リベリア(8.3%/6万円)、イラク(8.0%/74万円)、ミャンマー(8.0%/15万円)、エチオピア(7.9%/7万円)、インド(7.6%/20万円)、ラオス(7.6%/20万円)、といずれも1人当たりGDPが100万円以下の新興国であり、人口の増加ペースが早い国ばかりです。

私自身に経済成長率予測することなどはとても無理で(各国の各年のGDP額の予想とインフレ率の予想が必要ですから)、私はIMFの予想を使って考えるようにしています。このような経済成長の基本的なメカニズムを知っていると、IMFなどの予想を見る時にも理解がしやすくなると思い、ご説明させていただきました。

なお、IMFによる今後5年の平均成長率が5%以上の57か国の中で、投資家が普通に投資できる国はとても少なく、先進国はもちろんゼロ、MSCIエマージング指数に含まれる国がインド、中国、フィリピン、インドネシア、マレーシアの5か国、MSCIフロンティア指数に含まれる国がケニア、バングラデシュ、スリランカ、ガーナ、ベトナム、ナイジェリア、モロッコの7か国となっています。

データ出所:IMF "World Economic Outlook"(2015年4月発表)を基に筆者集計
コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「外資系金融マンがわが子に教えたい「お金」と「投資」の本当の話」、「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

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