第387回 2015年も終わりです。今年の相場はどうだった?

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第387回 2015年も終わりです。今年の相場はどうだった?

<質問>

2015年も終わります。今年1年の日本株相場を振り返られて、総評としてどう思われますか?

<回答>

2015年は日米の株式市場に大きな差が出た1年だったと思います。いずれも8月の中国ショックで大きく値を切り下げ、1年を通して描かれたチャートの形は似たような形になりましたが、日本株は米国株を上回って推移しました。今年の日本株市場は、米国株と対照的で、米国株との比較をしながら振り返っていくとよく分かるのではないかと思います。

昨年まで相場を牽引してきた米国株は、年初の時点で既にPERは先進国平均を大きく上回り、近年の中でも高水準のPERとなっていて、割高感がかなり強まっていました。一方の日本株のPERは年初の時点で先進国平均よりも低く、近年の中でもさほど高い水準にはなく、PERの上昇余地もある割安な水準にありました。

さらに、米国では金融緩和政策が終了し、いよいよ金融引き締めモードに向かうという気運が見られていた一方、日本では金融緩和策が継続されてきました。日本株はこの金融緩和策による追い風も受けていた点も米国株との大きな違いでした。加えて、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用見直しにより、GPIF自身の資金のみならずこれに追随する資金の流入も相まって、大きな資金が日本株市場に流れ込む構図がありました。

以上が主にPERの上昇率という面で日本株と米国株に差を生じさせました。PERの面で株価を考えると、株価は1株当り利益☓PERであり、株価上昇率は(1+1株当り利益の上昇率)☓(1+PERの上昇率)-1、で表されます。そうなるともう1つの1株当り利益の上昇率がポイントになりますが、ここで日米の株式市場の明暗を大きく分けたのが為替です。独歩高を続けてきた米ドルは、米国企業の業績に大きな壁となって立ちはだかりました。

米ドル高は米国企業にとって輸出面でマイナスになるだけではありません。米ドルで評価する企業の海外売上や利益を大きく目減りさせます。例えば1ドル80円から1ドル120円まで米ドル高円安が進むと、米国企業の日本支社が稼ぐ1億円の利益は125万ドルから83万ドルまで目減りします。同じ1億円の利益を稼いでいても40万ドル以上も減ったことになってしまうのです。また、米ドル高は米国への外国からの観光客を減らし、観光客が使うお金を減らします。これと真逆のことが起きていたのが大幅な円安が進んできた日本です。わずか数年のうちに対米ドルで一気に4割近くも切り下がり、急速に進んだ円安が、日本企業の輸出面に大きなプラス効果を産み、日本企業の海外売上や利益を増やし、日本への観光客を大きく増やしました。

この結果、日本の企業と米国の企業の利益成長率には大きな差が生じ、PERの上昇率でも利益の上昇率でも米国株を上回った日本株のパフォーマンスが米国株を上回る結果となりました。


コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「外資系金融マンがわが子に教えたい「お金」と「投資」の本当の話」、「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

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