第389回 投資信託での投資。利益確定・損切りのタイミングっていつ?【中長期】ってどれくらい?

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第389回 投資信託での投資。利益確定・損切りのタイミングっていつ?【中長期】ってどれくらい?

<質問>

投資信託での投資を行っていますが、利益確定・損切りのタイミングがわかりません。投資信託=中長期運用と思って放っておくのがいいのでしょうか?【中長期】とはどれくらいの期間を考えればいいでしょうか。

<回答>

私は利益確定や損切りを無理にする必要はないと思います。それらは「投機」において欠かせないものであり、「投資」においては絶対不可欠なものではなく、投機と投資というのは似ているようで全くの別物です。

投機というのは、短期間の価格変動による値上がり益によってお金を増やそうとするもの、短期間の売買を繰り返してお金を増やそうとするもの、です。短期間ですから、インカムゲインの積み上がりには期待できません。また、企業努力の積み重ねによる企業利益の成長の積み上がりにも期待できません。運用期間が長くなるほど、売買の回数が増えていくことになり、長期間経過した後で積みあがるのは自分の売買の成果です。

一方、投資というのは、投資先資産が本源的に持っているお金を増やす力によって、時間をかけてお金をふやそうとするもの、です。投資先資産が本源的に持っているお金を増やす力の代表例はインカムゲインです。債券の利金や株式の配当金は、時間が経てば経つほど積み上がり、売買をしなくてもリターンが積み上がっていきます。キャピタルゲインも同様です。債券の場合は時間の経過によるキャピタルゲインの増加はあまり期待できませんが株式の場合は時間の経過によるキャピタルゲインの増大が期待できます。それは、企業の成長によってもたらされます。例えば株価収益率(PER)で考えてみると、株価=1株当たり利益(EPS)×PERで、株価上昇率は(1+EPS変化率)☓(1+PER変化率)-1ということになります。PERが変わらなくても企業利益が増えた分は理論的には、株価が上昇するということです。企業利益が成長するには時間がかかります。年率10%の成長でも半年では5%しか利益が増えませんが、10年では約159、20年では約473%、30年では約1,645%利益が増えます。

時間をかけることで、こうしたインカムゲインや企業利益の成長が積み上がり、お金が増えることに期待するのが投資なのです。売買の成果を積み上げるのとは全く性質が異なります。1950年に約100円だった日経平均株価が65年後の2015年、約20,000円になりました。65年間、日本株に投資し続けた人はお金を200倍にすることができました。積みあがったのは日本企業の利益成長65年分です。一方、この間に日本株の売買を繰り返してきた人が積み上げたのは自分の売買の成果です。この期間で自分の売買の成果でお金を200倍にできた人がどれほどいらっしゃるか分りませんが、前者の場合はどなたでも200倍にできたという大きな違いがあります。

利益確定・損切りをする、というのは売買の成果を積み上げるという投機のアプローチです。もちろん、投資をするつもりで投資先として選んだ資産の魅力が低下した、前提が変わった、環境が大きく変わった、成長率が落ちた、期待リターンが低下した、などの理由で売却するということはあり得ると思いますが、そういうことがないのに、2割上がった・下がったといったルールで機械的に利益確定・損切りをする必要は「投資」にはないと思います。

なお、中長期というのは、明確な定義はありませんが投資商品の説明においては中長期というのは3年以上というのが一般的かと思います。投資成果の特徴というのは期間が長くなればなるほどその傾向が強くなるものと、期間が短くなるほどその傾向が強くなるものがあります。3年を境に短くなるほど短期の特徴が強く出て、3年を境に長くなるほど中長期の特徴が強く出ると考えれば良いかと思います。投資というものは、お金の価値を減らさないために必要なことであり、お金の価値を減らさないために運用をする期間は、一生涯に及びます。今、何歳であったとしても、実際に自分が死ぬまでお金との付き合いは続きます。その期間中、お金をずっと運用をしていく長い時間の中で、投機の成果を積み上げるのか、投資をしていくのか、をまずはっきり定めることが大切かと思います。


コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「外資系金融マンがわが子に教えたい「お金」と「投資」の本当の話」、「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

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