第392回 アメリカ大統領選、日本のマーケットへの影響は?

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第392回 アメリカ大統領選、日本のマーケットへの影響は?

<質問>

アメリカ大統領選は予想外の混戦ですが、今後の日本のマーケットへの影響などを教えてください。

<回答>

政治は私の専門分野ではないので、無責任なことを言うわけにもいきませんので、政治面は私見を述べるにとどめ、日本のマーケットへの影響を中心にご説明したいと思います。

今回の選挙結果の行方については私には予想することすらできませんが、これまでのところを見ると、政策云々の話よりも「ドナルド・トランプ対ヒラリー・クリントン」という対立構造で、「とんでもない人物」と「とんでもないということはないが諸手を挙げて歓迎するには至らない人物」のどちらが良いか、AかBか、みたいな様相を呈しているというのが私の個人的な印象です。結果がどう転ぶかは分りませんが、日本のマーケットに与える影響の中で最も大きいと私が考える点は、実はどちらの候補になっても同じ帰結になりそうな気配なのです。

その帰結というのは、日本の金融政策に対する干渉です。ドナルド・トランプ氏もヒラリー・クリントン氏も「為替操作国」というのを槍玉に挙げています。両氏とも「為替操作国」の代表例に中国と日本を挙げています。「為替操作国」というのは簡単に言えば、政府と中央銀行が一体となって自国通貨を安くするための政策を行って、わざと自国通貨安に誘導している国、ということになります。自国通貨安にすることで、輸出競争力の向上や企業の海外売上高の増加などの恩恵を受けている、ということです。これによってアメリカは富を奪われているとし、両者ともそんなことは許さないと発言しています。

中国政府の人民元に対する管理スタンスと、日本政府の日本円に対する管理スタンスは全く別次元のものですし、日本円は完全に市場原則にもとづく取引が行われている通貨です。が、両氏にそうした説明は届きません。そもそも日本政府から独立した日本銀行が、円安の実現のためではなく、インフレ目標の達成のために金融緩和を行っている、というのが公式なスタンスです。たとえインフレ目標達成のために行っている金融緩和が円安を引き起こしたとしても、それはあくまでも副次的なもの、つまり目的として狙ったものではなく、目的として狙うインフレ率の実現のために金融緩和を行った副作用という位置づけです。

しかし両氏はそうとは認めず、不当に自国通貨安誘導を行うための政策を行っているとしています。すると、どちらが大統領になっても、日本の金融政策に対して干渉をしたり批判をしたり、ということは十分に予想され、それが「円高」を招く可能性があります。私は、これが今回の米大統領選挙が日本のマーケットに対してもたらす最も大きなインパクトになるのではないかと考えています。

あとは蛇足になってしまうかもしれませんが、今年は日本でも夏に参議院選挙が控えています。日米の大きな選挙があると皆さんも「選挙を前に様子見ムードが・・・」という報道や解説を見聞きすることが多くなるであろうことは容易に想像がつくと思います。こうした「様子見」というのは「売り」よりも「買い」を減らす傾向があります。すると、「様子見」という言葉があちこちで踊り、株価がなかなか伸び悩む可能性があります。こんなことを頭の片隅おいておいても良いかもしれません。


コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「外資系金融マンがわが子に教えたい「お金」と「投資」の本当の話」、「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

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