マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
前回までは2回にわたり、短期的には金利差が為替相場を決めることが多いが、長期的にはむしろインフレ率の差のほうが為替の動きをうまく説明することをお話しました。
ところで、今までの為替相場に関する説明ではドル円相場に限定してきました。しかし、私たちは日常的に次のような文章をあちこちで見かけます。
いわく「円はドルに対して下げたが、対ユーロでは堅調な動き」「豪ドルは円ならびにドルなど全通貨に対して上昇」というようにです。これは、各通貨はテンデばらばらに動いていることを示しています。とするなら、ドルとの関係でのみ円相場を見ているだけでは、為替の動きの全体像を把握できないことはお分かりですね。
現在、日本で運用されている国内投信(公募分)は約60兆円あります。このうち外貨建て資産で運用されているのが約25兆円。その内訳を見ると、米ドル建て資産への投資は9兆円と外貨建て資産全体の4割に満たないのです。残りの分については、豪州(20%)、ユーロ(10%)、ブラジル(9%)、カナダ(4%)などへ幅広く投資しています。
個別のファンドを見ても、単独の通貨の金融資産に投資するものよりも、複数の通貨の債券、株式等に分散投資するタイプのものが増えてきています。とすれば、ドルだけではなく、それ以外の主要通貨の動きについても、留意しておくべきでしょうね。
【図1】「ドル/円相場だけ見ていても為替相場はわからない(1)」
(グラフ:金融データシステム作成)
図1(「ドル/円相場だけを見ていても為替はわからない(1)」)をご覧ください。これは、2002年1月=100として、その後の主要外貨の対円相場の動きを示したものです。このグラフを見ると「ああ、ドル/円相場だけを見ていてもだめだな」とお分かりいただけると思います。なにしろ、米ドルは円に対してほぼ一貫して下落、直近では何と4割以上下がっています。ドルだけしか見ていなければ「やっぱり円は断然強いのね」としか見えません。しかし、それ以外の通貨は違います。豪州ドルは2割以上上げているのです。ユーロだって、せいぜい数%下がっているに過ぎないのです。
であれば、円が世界の様々な通貨のなかで総合的にどのあたりに位置しているのかが分かれば便利ですね。実はそれが実効為替レート指数なのです。これは、円相場を対米ドルとの関係だけではなく、主要な貿易相手国との間での貿易額で加重した上で算出された総合的な指数なのです。
図2(「ドル/円相場だけ見ていても為替相場はわからない(2)」)はそれを示しています。たとえば3 3' や 4 4'時点では円はドルに対して上げていますが、円の総合的な実力を示す実効レートは逆に下がっています。ドル円相場だけではなく、円の総合的な水準を示す実効レートの重要性がお分かりいただけると思います。
【図2】「ドル/円相場だけ見ていても為替相場はわからない(2)」
(グラフ:金融データシステム作成)
この実効為替レート指数は日本銀行が毎日「名目実効為替レート指数」として、新聞紙上などに公表していますので是非ご覧になることをお勧めします。なおこの数値(131.02)は大きくなればなるほど円高であることを示すことに注意してください。1ドル=円という表示とは大小関係が逆になります。
コラム執筆:角川総一
(株)金融データシステム代表取締役。1949年大阪生まれ
金融教育、金融評論家。
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