第3回 信用取引で成功するための2つの重要なポイント~信用取引のルール(仕組み、コスト)~ 【信用取引を上手に活用する方法】

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第3回 信用取引で成功するための2つの重要なポイント~信用取引のルール(仕組み、コスト)~ 【信用取引を上手に活用する方法】

これまでお話ししてきたように、信用取引は上昇相場でも下落相場でも投資家の強い味方になってくれますが、上手く利用するためには「知っておかなければならないルール(仕組み、コスト)」がありますので、今回はそのポイントや注意点についてお話したいと思います。

信用取引を利用する時にまず注意しなければいけないのが、委託保証金と実際に売買できる金額です。信用取引では、売買したいと考えている銘柄の売買代金の30%の委託保証金が必要ですが、この委託保証金率ですと、およそ3.3倍までの取引が可能となります。

したがって、委託保証金を30万円預けた場合、30万円÷0.3で100万円までの売買ができます。実際に30万円しか手元に無いにも関わらず約100万円の売買ができるわけですから、損益額も30万円で現物株を売買した時のおよそ3.3倍になり、信用取引の方がより大きな利益を上げることが可能になるのです。

このように委託保証金以上の額で取引することを、「レバレッジをかけて取引する」などと言いますが、利益面で考えた場合非常に大きなメリットになる一方、マイナスになった場合の損失も大きくなることになり、損失額の大きさによっては取引ができなくなる可能性も考えておく必要があります。

このようにお話しすると、やはり信用取引は難しいものだと思われるかもしれませんが、実はそうではありません。信用取引でレバレッジを効かせて取引した場合、なるべく短い時間で利益を確保するか、損失が拡大しないうちにロスカット(損失限定)を行うことを心掛ければ良いのです。

そうすることによって売買回数が増えた分、通常の現物株取引よりも大きな利益を上げるチャンスが出てくると同時に、ロスカットを早めに行うことで、損失分を取り返すチャンスも維持できることになるわけです。

また他にも信用取引で売買する場合、建て玉保有期間を短くした方が良い理由があります。それは、建て玉保有期間のコストです。買い建ての場合、買い付け代金に対して「金利負担が発生」しますので、レバレッジを効かせた取引を行おうとして売買代金が大きくなると、その分金利負担も大きくなります。また長く保有すればするほど金利負担額も大きくなることになってしまいます。

さらに制度信用取引と一般信用取引と比較した場合、一般信用取引の方が金利が高い場合が多く、短い期間で売買することを前提に考えた場合、制度信用取引を選んだ方が投資家にとっては金利負担が小さくて済むことになるのです。

一方、一般信用取引(原則無期限)を利用した場合、現物株を持っているような錯覚に陥るかもしれませんが、実際には金利負担が発生しているため、長い期間保有したあとにいざ返済しようとした時、思った金額よりも利益が少なかったということになりかねません。

一方、売り建てを行った場合ですが、この時貸株料が発生します。この貸株料はいわゆる株券のレンタル料金のことで、売り建て時に借りた株数とその期間分だけレンタル料金として発生するものです。また、信用取引の売り残高が増加してきて貸し出す株券が少なくなったり無くなったりすると、今度は「逆日歩」と言って、貸株料に加えて日々の支払いの負担が増加する場合があるので注意する必要があります。

なぜこのような「逆日歩」が発生するのかと言いますと、そもそも信用取引で売買したとしても、実際には株券の受け渡しと同時に金銭の授受も行われているため、売買が成立するためにはお金や株券が必要になるからです。

例えば、信用取引の売り注文が約定したとき証券金融会社が証券会社に株券を貸し出すわけですが、証券金融会社も持っている株数はそんなに多くありませんので、売り建てが増えてくると貸し出す株が少なくなるかゼロになってしまいます。

この時、証券金融会社が、生損保など株券を大量に保有している機関投資家に株券の貸し出しを申し込むわけですが、この貸し出しを依頼した時に入札が行われ、その需要に応じて「逆日歩」の金額が決まるわけです。仮に需要が多ければ、逆日歩は高くなりますし、逆にそれほど多くない場合は低くなったりするのです。

また逆日歩はいきなり発生するケースが多く、急激に損益状況を悪化させることになりますのでほったらかしにせず、逆日歩発生するかどうかの目安となる信用取引の売り残高の推移(または証券金融会社が発表している貸借倍率)などを毎週しっかりチェックする習慣を身に付けたいところです。

一方で売り建てを行った場合に受け取れるものもあります。それは、受け取り金利です。現物取引の場合、売ったあと売却代金が口座に入りますが、信用取引の売り建ての場合、現物取引で口座に入るお金(売却代金)が口座には入らず、別の投資家の信用取引の買い建て時の購入代金に貸し出される仕組みになっています。
そのため、貸し出された売り建ての売却代金に貸出金利が発生し、その利息分のお金が受け取れるのです。

ただ現在は低金利で金利が付いていないため、金利分のお金は発生していませんが、今後金利が上昇する局面になってきた時には売り建てを行ったら金利分のお金がもらえるということを覚えておくと良いかもしれません。

いかがでしたでしょうか。ここまでいろいろお話してきましたが、信用取引で成功するための重要なポイントは、その仕組み上現物取引にはないコストが発生したり、レバレッジを効かせたりすることができることから

【1】「なるべく短い時間で利益を確保する」

【2】「損失を拡大させないため早めにロスカットを行う」

などであるということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

次回は、より身近になった信用取引についてお話したいと思います。

コラム執筆:福永 博之

株式会社インベストラスト代表取締役。IFTA国際検定テクニカルアナリスト。ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ 株式・資産形成講座 講師。勧角証券(現みずほインベスターズ証券)、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)、同証券経済研究所チーフストラテジストを経て、現職。現在、投資教育サイト《アイトラスト》の総監修を務める。ラジオNIKKEI、テレビ東京、TOKYO MXテレビ、CS日テレなどの株式関連番組にレギュラー出演。マネー雑誌の連載のほか、執筆多数。最新刊『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った「株」チャートらくらく航海術』(ダイヤモンド社刊)では、チャート分析の基本中の基本、ローソク足に徹底的にこだわって騰がる株を見つける方法をわかりやすく解説し、好評を博している。

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