マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
前回、信用取引の始め方をお話ししましたが、今回は信用取引を始めた後に損失を拡大させないためのポイントについてお話ししたいと思います。
信用取引を始めた際、損失を拡大させないための注意点がいくつかありますが、今回は二つに絞ってお話ししたいと思います。
その一つは、みなさんお分かりだと思いますが、現物株と同様に考えて「塩漬けにしない」ことです。現物株も塩漬けにしてしまうのは良くありませんが、会社が倒産しない限り、そのまま保有して実現損の先送りができます。
一方、信用取引で買い建てした場合、制度信用取引では6カ月で返済しなければいけませんから、まだ大丈夫と思ってマイナスのまま放置しておいても、返済期日が来てしまうと強制的に返済されてしまいます。また、現物株と違って金利負担がある分損失拡大につながります。
さらに無期限信用取引と呼ばれる一般信用取引の場合でも同様です。返済までの期限が無いと考えてしまうと、いつか株価が戻るのではないかといった淡い期待を抱いてしまいがちですが、想いとは逆に動くことが多々あります。
実際に株価が戻らずに長い時間が経過してしまった場合、金利負担分が増加し、気付いた時には自分の考えていた損益分岐価格より高い価格になってしまっているのです。
そうなると、一般信用取引でも値下がりによる含み損と同時に長く保有すればするだけ金利負担が発生し、損失拡大につながってしまいますので注意しなければいけません。
続いて二つ目の注意点です。二つ目は株券を担保に差し入れて取引を行う際に注意しなければならない点です。
例えば、株券を担保に差し入れる時の理由として挙げられるのが、既に保有株が塩漬けになってしまっているケースです。信用取引の担保に塩漬け株を活用するというのは、動かせなくなってしまった資金を再び活用できることにつながるわけですから、株式市場が上昇相場に転じた時など、資金が不足している投資家にとっては強い味方になってくれます。
またこうした時、株式市場全体の底上げと同時に担保に差し入れた塩漬け株も上昇し始めます。そうした中で、保有株の損益分岐点を下げようとして塩漬け株を買い建てしてしまうことが考えられますが、実はこれが損失をもっとも拡大させてしまうことにつながるのです。
なぜなら、担保に差し入れた保有株が上昇している時、担保価値の上昇に加えて、建て玉の含み益も増えるわけですから、「利益が倍に膨らんだ印象」になりますが、逆に動き始めた時はどうでしょう。値下がりし始めた時は、「損失が倍に膨らんでしまう」ことになってしまい、思わぬ損失拡大につながってしまうことになるのです。
実はこうした取引のことを「二階建て」と呼んだりしていますが、この「二階建て」は上昇相場で担保に差し入れた株券に含み益が出ている時でもやってはいけません。
なぜなら、含み益が出ているからまだ大丈夫とか、まだ上昇する、と考えて買い増しをしてしまった後に株価が予想に反して下落した時、保有株の含み益が一気に減るばかりか、せっかくの利益をすべて吐き出すことになりかねないからです。
信用取引に慣れたころや、相場の上昇の勢いが強く、担保証券の価値が上昇している時などに「二階建て」を行う人がいますが、逆に動いた時の急激な含み益、担保価値の減少に加え、損失拡大につながることなどを考え、「二階建て」は行わないようにしましょう。
コラム執筆:福永 博之
株式会社インベストラスト代表取締役。IFTA国際検定テクニカルアナリスト。ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ 株式・資産形成講座 講師。勧角証券(現みずほインベスターズ証券)、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)、同証券経済研究所チーフストラテジストを経て、現職。現在、投資教育サイト《アイトラスト》の総監修を務める。ラジオNIKKEI、テレビ東京、TOKYO MXテレビ、CS日テレなどの株式関連番組にレギュラー出演。マネー雑誌の連載のほか、執筆多数。最新刊『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った「株」チャートらくらく航海術』(ダイヤモンド社刊)では、チャート分析の基本中の基本、ローソク足に徹底的にこだわって騰がる株を見つける方法をわかりやすく解説し、好評を博している。
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