第8回 需給関係から株価の値動きを予測するためにはこれを見る!【信用取引を上手に活用する方法】

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第8回 需給関係から株価の値動きを予測するためにはこれを見る!【信用取引を上手に活用する方法】

今回は、売買判断に役立つ信用取引情報の見方についてお話します。ただ、信用取引情報といっても個別銘柄すべてに共通する話ですので、自分は信用取引をしないという人にとっても役立つ話ですので是非最後までお読みください。

では、信用取引に関連する情報とその見方を二つご紹介します。一つ目は信用倍率です。信用倍率とは、東証が週1回火曜日に発表するもので、日本経済新聞の水曜日の朝刊に掲載されます。またネット証券では火曜日の夕方5時以降に確認できるところもあります。

信用倍率は、買い建て玉と売り建て玉の比率を表したもので、計算式では「買い建て玉数÷売り建て玉数」となります。例えば、買い建て玉数が10万株で、売り建て玉も10万株だった場合、10万株÷10万株=1倍となります。この1倍は買いと売りの比率が同じであるとことを表します。
また、買い建て玉数が10万株で売り建て玉数が5万株だった場合は、10万株÷5万株=2倍となります。これは、売り建て玉数に対して買い建て玉数が2倍あることを表していることになります。

一方、買い建て玉数が10万株で売り建て玉数が30万株だった場合ですが、こちらは10万株÷30万株≒0.33倍となります。

ではそれぞれの倍数の意味を考えてみましょう。そもそも買い建ての場合、売って返済を行い、売り建ての場合は買い戻して返済しますが、こうした返済行動を先ほどの信用倍率と合わせて考えるとすっきりします。

例えば、前述の信用倍率が1倍の時、買い建て玉と売り建て玉の比率が同じですので、買い建ての売りエネルギーと売り建ての買いエネルギーは全く同じと言えます。

一方、信用倍率が2倍の時、売り建て玉数より買い建て玉数の方が多いわけですから、それだけ売りエネルギーが大きいと考えられます。

さらに信用倍率が0.33倍の時は、買い建て玉よりも売り建て玉が3倍多いわけですから、それだけ買いエネルギーが大きいと考えられるわけです。

ここで信用倍率から見た需給関係と株価動向を考えてみましょう。
一般的に買い残高が多ければ、将来株価が上昇すると予測して買っている投資家が多いとされていますが、実際の需給関係から見ると株価が上昇すれば買い建て玉数だけ売りが出てくることが考えられると同時に、株価が下落すればそれだけ損失が膨らんでいる投資家が増えていることになり、株価上昇や戻りを妨げる売り圧力になっているケースが多く見られます。

逆に信用倍率が0.33倍のように1倍を割り込んでいるケースでは、買い戻して返済しようと待ち構えている投資家が多いことになり、株価が上昇すると、踏み上げを嫌って損を覚悟で上値を買う投資家が出てくると同時に株価の上昇を助けることになりますし、株価が下落した時でも返済買いが入って株価が下げ渋るケースが多く見られるのです。

二つ目は、貸借倍率についてお話します。貸借倍率は日証金など証券金融会社が毎日発表する指標で、「融資」が買い建て玉数にあたり、「貸株」が売り建て玉数にあたります。

また信用倍率と同様で融資残高と貸株残高の比率を表し、融資残高÷貸株残高で計算しますが、ここまでお話すればみなさんおわかりのように、貸借倍率も信用倍率と同じ見方になります。

ただ信用倍率は1週間に1回の発表であるのに対して、貸借倍率は毎日発表され速報性があるため、足元の信用取引の建て玉の状況を把握するのに役立ちます。

このように信用倍率と貸借倍率をチェックしておけば、需給関係から株価の値動きが予測できることになり、現物取引しか行わない投資家でも自分が保有している銘柄の売買判断に役立つことになるのです。

現物取引しか行わない投資家の方も信用倍率や貸借倍率をチェックすることをお勧めします。

コラム執筆:福永 博之

株式会社インベストラスト代表取締役。IFTA国際検定テクニカルアナリスト。ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ 株式・資産形成講座 講師。勧角証券(現みずほインベスターズ証券)、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)、同証券経済研究所チーフストラテジストを経て、現職。現在、投資教育サイト《アイトラスト》の総監修を務める。ラジオNIKKEI、テレビ東京、TOKYO MXテレビ、CS日テレなどの株式関連番組にレギュラー出演。マネー雑誌の連載のほか、執筆多数。最新刊『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った「株」チャートらくらく航海術』(ダイヤモンド社刊)では、チャート分析の基本中の基本、ローソク足に徹底的にこだわって騰がる株を見つける方法をわかりやすく解説し、好評を博している。

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