マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
主として賃貸住居に投資する銘柄(以下、住居系銘柄)の稼働率は極めて好調です。賃貸住宅特化銘柄の直近の稼働率は、賃貸住居では事実上の上限といえる95%を全て上回っています。
稼働率の上限が95%となっている理由は、賃貸住宅の契約条件にその要因があります。賃貸住宅に入居されている読者の方も多いと思いますが、賃貸住宅の場合は退去日から1ヶ月前に退去の予告(解約通知)を行う契約が一般的です。貸主から見れば次の入居者を見つけるまで短い猶予期間しかないのです。さらに住居の場合には該当の部屋の原状回復を行ってから実際の募集が始まり、入居者が物件を内見する時期は大半が週末に限定されてしまいます。つまり空室期間(J-REITの資料では、「ダウンタイム」とよく表記されています)が少なくとも2ヶ月程度発生してしまいます。このため複数の物件で運用する場合、賃貸住宅では稼働率が100%にはならないのです。
住居系銘柄の高い稼働率は、一時的なものではなく当面維持できる状況です。というのも住居系銘柄の投資比率が高い東京23区内では、利益率が高い分譲マンションの供給が優先されているため賃貸住宅の供給が少ない状態がリーマンショック後から続いているからです。
従って住居系銘柄は、高い稼働率を維持している物件を中心に賃料単価の引き上げなどの収益力向上の動きを強めています。他の用途に投資する銘柄の保有物件の収益が低迷を続ける中で、住居系銘柄はいち早く収益回復に乗り出していると言えるでしょう。
今後、住居系銘柄が安定したファンダメンタルズを投資家に示し続けることができれば、価格上昇(利回り低下)の余地は大きくなります。過去2年で住居系銘柄の価格は他用途より上昇しているもののJ-REIT市場では、住居系銘柄の利回りは市場全体より高いものになっています(図表参照)。
出所:japan-reit.com (注)毎営業日16時以降に最新のデータに更新されます。
しかし50年以上の歴史を持つアメリカのREIT市場では、住居系銘柄の平均利回りは市場全体と同じ程度か低いものになっています。例えば3月末時点の住居系の平均利回り2.84%に対し市場全体の利回りは3.34%となっている(※)ように、住居系銘柄は利回りが低い(株価が高い)状態になっており収益安定性が高く評価されてます。J-REIT市場では図表の通り日本アコモデーションファンド投資法人(3226)以外は市場全体より利回りの高い銘柄で構成されていますので、価格が上昇(利回りは低下)する余地がある銘柄が多いと考えられます。
ただし、賃貸住居が好調な点は、今後の懸念材料になる可能性があります。具体的には、賃貸住居への投資に注目する投資家が増加し、取得競合に伴って物件価格が上昇(物件の取得利回りは低下)し始めている点です。前号で記載した4年半ぶりのJ-REIT新規上場銘柄が住居系銘柄であることも偶然ではないのです。物件価格が上昇した場合、いままでと同様に首都圏での物件取得を続けるだけではなく、保有物件の売却や高い利回りの地方物件取得など銘柄の運営能力が問われることになりそうです。
※2012年3月31日時点。出所:NAREIT
http://www.reit.com/IndustryData/Property-Sector-Performance.aspx
コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介
<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありませんまた執筆時点の情報を基に記載しております。>
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