第3回 J-REITの新規上場銘柄に投資する場合の注意点 【J-REIT投資の考え方】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第3回 J-REITの新規上場銘柄に投資する場合の注意点 【J-REIT投資の考え方】

今年度に入り、J-REIT市場への新規上場の動きが活発になっています。実質的に4年半ぶりの新規上場となったケネディクス・レジデンシャル投資法人(2012年4月26日上場、証券コード3278、以下KDR)に続き、2012年6月13日にはアクティビア・プロパティーズ投資法人(証券コード3279、以下API)が上場を予定しています。今後も数銘柄の上場が予定されていることもあり、今回はJ-REITの新規上場銘柄に投資をする場合の注意点について記載していきます。

J-REITの新規上場は事業会社の上場とは異なり、運営実績がない状態から行われるという特色があります。一部の銘柄では上場前に不動産を取得して上場したという事例もありますが、多くの銘柄は上場時の調達資金を基に不動産を取得し運営を開始します。このような特色が注意点につながってきます。

まず、一つ目の注意点は、固定資産税及び都市計画税(以下、固都税)が1口あたり予想分配金に与える影響を考慮する必要があるということです。固都税は毎年1月1日時点での所有者に課税される税金であり、その納税時期は4月以降に到来します。例えば既に上場を果たしたKDRの1口分配金は、通常の6ヶ月決算となる第2期(2013年1月期)に6,146円となっています。他の住居系銘柄と比較しても図表の通り遜色ない水準です。

ただし、この決算期はまだ固都税課税の影響が及んでいません。実際にKDRが固都税の影響を受けるのは、業績予想がまだ開示されていない第3期(2013年7月期)以降となります。KDRは現時点のポートフォリオ304億円分全ての固都税が第3期以降に発生しますので、業績への影響は大きくなるのです。投資家としては、業績予想の前提条件に固都税の影響額が記載されている場合は、その金額を差し引いた分配金を投資の目安とすべきなのです。またKDRのように前提条件に影響額が記載されていない場合は、分配金が減少する可能性を視野に入れておく必要があります。

二つ目の注意点は、上場時の借入金比率を確認しておく必要があるということです。J-REITの場合は、どの銘柄も財務運営上の借入金比率の上限を定めています。例えばKDR、APIともに財務方針上は原則として60%を上限とするとしています。既に上場を果たしたKDRは、物件取得額に対する借入金比率が60%程度(※)になっています。従ってKDRは、今後物件取得を進めていくためには増資が必要な状態になっていると言えるのです。

価格水準が高い時の増資はあまり問題とはなりませんが、低い価格での増資は1口あたり分配金を減少させる要素となる可能性が高くなります。新規上場銘柄は、上述した通り運営実績がない状態となっていますので、資本戦略(増資実施方針)が既存銘柄と比較するとわかりにくい状態です。従って上場時の借入金比率が財務運営上の上限と比較して余裕がある銘柄の方が投資を行う安心感は強いと言えるのです。

※KDRの財務運営上の借入金比率上限は、有利子負債比率と記載されています。同一スポンサーが運営するケネディクス不動産投資法人(証券コード8972)の場合、有利子負債比率は総資産に対する借入金比率となっているため、KDRも同一の基準であった場合は、取得額に対する借入金比率よりやや低い数値となる可能性があります。

<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

マネックスからのご留意事項

「特集1」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧