第6回 「ETFの裏方を担う人たち」 【ETF解体新書】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第6回 「ETFの裏方を担う人たち」 【ETF解体新書】

こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。セミナーなどでETFのお話をすると、決まって出てくる質問があります。「ETFの価格が本来の価値から離れてしまったらどうするのですか・・?」そもそもETFは、市場価格と本来の価格(理論価格)がかい離しにくい仕組みを持っています。

ご説明しましょう。まず、取引所に上場しない、ふつうの投資信託の価格はひとつしかありません。それが基準価額です(「理論価格」とも呼ばれます)。ETFにも理論価格はありますが、取引所に上場する商品であるため、「市場価格」が常に変動します。市場価格が理論価格から離れて買い上げられたり、逆に売り叩かれたりすると、ETFはもはや市場平均と連動する道具とはいえなくなってしまいますね。

そこで登場するのがAP(指定参加者)と呼ばれる「裏方」の人たちです。実はAPは、ETFの組成、メンテナンスにおいて重要な役割を担っています。ひと言でいうと、ETFの規模を膨らませたり、縮ませたりしているのです(通常APになるのは主として証券会社です)。

具体例を挙げてみましょう。例えば、日経平均株価を連動目標とするETFに大量の買い注文が入ったとします。このとき、大量の買いに応じるため、ETFの口数を増やす必要が生じます。AP(指定参加者)は市場から日経平均株価に採用されている225社の株を大量に調達し、直ちに日経平均株価を連動目標とするETFを組成します。これを「設定」と呼びます(ETFの「口数」が増えるわけです)。これによって大量の買い注文に応じます。

逆にAPが「設定」と逆の作業をすることもあります。現存する日経平均株価を連動目標とするETFという枠をほどいて、225社の株に戻すのです。これを「交換」といいます(ETFの口数を減らすのです)。APはこの「設定」「交換」という作業を通じて、ETFの流動性をコントロールしているのです。

また、APは裁定取引も行っています。例えば今、前述のETFの「市場価格」が835円、理論価格が810円で、両者の価格がかい離しているとしましょう(本来の価値よりも価格が高い状態です)。ここでAPは225社の株を市場で購入し、直ちに「設定」を行い、日経225ETFを瞬く間に市場で売却します。こうすることで利ざやを稼ぎます。複数のAPが同時に裁定取引を行えば、日経平均株価を連動目標とするETFの「市場価格」はたちまち「理論価格」に収斂します(理論価格が市場価格より高くなっている場合は逆の裁定取引を行います)。ETFはAP(指定参加者)の裁定取引を通じて、市場価格と理論価格のかい離を防いでいるのです。これこそ、ETFの隠れたメリットといえるのではないでしょうか。

コラム執筆:カン・チュンド

晋陽FPオフィス代表  

2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。

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