第5回 先物の活用について(リスクヘッジ) 【福永博之の先物・オプション講座】

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第5回 先物の活用について(リスクヘッジ) 【福永博之の先物・オプション講座】

株式会社インベストラストの福永博之です。今週は先物の活用についてお話ししたいと思います。第1回でもふれましたが、日経225先物は日経平均株価やその採用銘柄の価格変動リスクを回避するために導入されたのがそもそもの始まりでしたが、先物をリスクヘッジに活用しているという投資家が少ないのが現実のようです。

なぜなら、先物という言葉に馴染みが薄いことから、つい敬遠してしまいがちになってしまっているのです。ただ、これからお話しすることを理解していただければ、中長期投資を行う投資家にこそ、先物取引が必要だということがおわかり頂けるのではないかと思います。

前置きが長くなってしまいましたが具体的に話を進めましょう。例えば、リーマンショックや今回のギリシャなど、ユーロ圏の国々における金融不安を背景とした東京マーケットの株価下落で、投資家のみなさんはどのように対応されたでしょうか?

おそらく、今回の不安は一時的なものであるから、「嵐が過ぎ去るのを待つ」という気持ちで、何もせずに放っておくという対応をされた方が多かったのではないかと思われます。
確かに、一時的な下落であれば株価は戻ると思われますので慌てることはないという風に考えるのは当然ですし、実際にギリシャがユーロから離脱したり、欧州の景気悪化で日本企業の業績が予想を下回ってくるまでは、株価は戻ると考えるのが普通です。

ただ、仮にギリシャがユーロを離脱するようなことになった場合はどう対応すればよいのでしょうか。リーマンショックの時もそうでしたが、日本や中国への影響は軽微と見る考え方もありましたが、結局両市場ともに大きく値下がりする結果になってしまっています。

今回のユーロ圏の問題はリーマンショックとまったく同じではないものの、今度どのような事態になるのかは誰にも想像できないと思われますが、まさに現在のように実際にギリシャ離脱によるユーロ崩壊などが起こっていないにもかかわらず、株価が先行して下落している(いわゆるリスクオフ状態の)なかで、本当にユーロが崩壊してしまった場合は損失が拡大するばかりか、長い時間買い値まで株価が戻らないといったケースが生まれてくるのではないかと思われます。

また、実際に最悪の事態が起こってから対応しようとしても遅い場合が多いというのが、これまでの経験でみなさんおわかりでしょう。

では、個人投資家はどのように対応すればよいのでしょうか。1つの方法が、先物取引の活用なのです。

特に、長期で株を保有しようと考えている投資家にとって気を付けなければならないのは、せっかく蓄えた利益をすべて吐き出してしまうことと、長く株を保有する間、今後もリーマンショックやギリシャ問題のようなことが起こる可能性があるということです。

そうした時に、先物を使ったリスクヘッジ手法を身につけておけば、転ばぬ先の杖の役割を果たしてくれることになると思われます。

具体的な方法はこうです。仮にみなさんが日経平均採用銘柄を時価の合計でおよそ110万円分持っていたとします。(ここでは一例としてキヤノンを300株3,670円で持っているケースを考えます。)その時に、外部環境が不透明になってきたり、為替が円高になって業績への懸念が出てきたりした時に、この保有株の時価と同じ額の先物を売り建てするのです。

例えば、ゴールデンウイークの谷間の2012年4月27日の日経225先物が9,700円台で推移していた時を例にすると、日経225先物の終値が9,500円ですので、9,500円でリスクヘッジのための先物を売り建てしたとすると、ラージは9,500円×1000倍×1枚=950万円、一方ミニは9,500円×100倍(ミニ)×1枚=95万円となり、100万円分に相当するのはミニ先物を1枚売り建てすればよいことになります。

では、その後のキヤノンと先物価格はどう動いたでしょうか?

まずはキヤノンからです。キヤノンは2012年5月28日の終値で3,280円まで下落してしまいましたので、(3,280円-3,670円)×300株=-11.7万円の損失となっていますが、5月21日のミニ先物の終値が8,600円ですので、利益額を計算してみると、(9,500円-8,600円)×100倍×1枚=9万円となり、-11.7万円+9万円=-2.7万円となり、何もせずに株を保有している時よりも9万円分損失を減らすことができたことになるのです。

こうした使い方ができるようになれば、長い投資生活の中で○○ショックや○○危機などは取るに足らないものになっていくのではないでしょうか。

先物によるリスクヘッジについて簡単に書きましたが、もっと詳しい内容をマネックス証券で行ったセミナー「はじめてみよう!日経225先物&ミニ活用術セミナー」の中でお話ししています。詳しく知りたい人は、是非そちらもご覧ください。

コラム執筆:福永 博之

株式会社インベストラスト代表取締役。IFTA国際検定テクニカルアナリスト。ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ 株式・資産形成講座 講師。勧角証券(現みずほインベスターズ証券)、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)、同証券経済研究所チーフストラテジストを経て、現職。現在、投資教育サイト《アイトラスト》の総監修を務める。ラジオNIKKEI、テレビ東京、TOKYO MXテレビ、CS日テレなどの株式関連番組にレギュラー出演。マネー雑誌の連載のほか、執筆多数。最新刊『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った「株」チャートらくらく航海術』(ダイヤモンド社刊)では、チャート分析の基本中の基本、ローソク足に徹底的にこだわって騰がる株を見つける方法をわかりやすく解説し、好評を博している。

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