マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
株式会社インベストラストの福永博之です。今回はオプション取引の注意点についてお話しします。
前回の検証では株価が上下どちらかに動く場合を想定してコールオプションとプットオプションをそれぞれ購入(ロング)してSQ値で決済しましたが、株価が上昇してくれたおかげで、プットオプションは損失となったもののコールオプションの買いでは投資額のほぼ倍となる好結果が得られました。
このように日経平均株価が上下に動く時、株価が権利行使価格を上回ってくれれば上回った分だけコールオプションの価値(=これを本質的価値といいます)が上がることになるわけですが、一方で株価が動かないときや権利行使価格と日経平均株価の開きがあって、株価が権利行使価格に届かないと考えられる場合に取る戦略があります。
その戦略をコールやプットの売り(ショート)戦略と言います。
例えばコールオプション取引では、日経平均株価が権利行使価格を下回ってしまうと価値はゼロになりますし、プットオプション取引では、日経平均株価が権利行使価格を上回ってしまうと価値はゼロになってしまいます。
こうした特徴から、ショート戦略では、株価が動かないか、あるいは動いてもコールオプションの権利行使価格を上回らないと考えた時や、株価が動かないかあるいは動いたとしてもプットオプションの権利行使価格を下回らないと考えた時に、それぞれのオプションを売って利益を上げることを狙うのです。
たとえば、権利行使価格が9,000円で70円の7月限コールオプションがありますが、7月のオプションのSQ値が9,000円を上回らないと考える人は、このコールオプションを売っておけば、売った価格分だけオプションのプレミアムがもらえることになり、その分利益が得られることになります。
また、プットオプションでも、権利行使価格8,750円で310円の7月限のオプションがありますが、7月SQで8,750円を下回らないと考える人は、このプットオプションを売り建てしておきます。
仮に7月SQでSQ値が8,750円を上回っていれば、このプットオプションの価値はゼロになり、310円分の利益が得られることになるわけです。
ただここでちょっとオプションの価格形成について考えてみましょう。
2012年6月15日現在の日経平均株価8,569円32銭で、権利行使価格が9,000円のコールオプションになぜ70円の値段が付いているのでしょう。現状では日経平均株価が権利行使価格を上回っていないため価値はゼロのはずです。
実はこれが時間的価値と呼ばれるもので、日経平均株価がコールオプションの権利行使価格を下回っている状態で、本質的価値がゼロでも、価格がついているのです。
また、オプションの価格を決める要因としてもう一つ重要なものにIV(インプライドボラティリティ)があります。これは、オプションの変動率を表すもので、通常は20%台で推移していますが、それよりも数値が高くなると、その分オプション価格の変動率が大きくなっていることを表し、思わぬ上昇となったりすることがあるのです。
従って、先ほどのコールオプションのショート戦略を実行した場合、まず日経平均株価が権利行使価格を上回ってこないかどうかの確認に加え、IVが上昇していないかにも注意を払い、オプション価格が上昇して損失につながらないようにしなければなりません。
また、仮に日経平均株価が上昇して権利行使価格を上回ってしまった場合、本質的価値の分オプション価格が上昇しますが、さらにIVの上昇分も加わって損失がどんどん拡大し、極端に言えば無限大の損失になってしまうことが考えられるのです。
株価が動かないときに利益が得られるショート戦略ですが、損失は限定されるわけではありませんので特に注意が必要と言えます。
コラム執筆:福永 博之
株式会社インベストラスト代表取締役。IFTA国際検定テクニカルアナリスト。ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ 株式・資産形成講座 講師。勧角証券(現みずほインベスターズ証券)、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)、同証券経済研究所チーフストラテジストを経て、現職。現在、投資教育サイト《アイトラスト》の総監修を務める。ラジオNIKKEI、テレビ東京、TOKYO MXテレビ、CS日テレなどの株式関連番組にレギュラー出演。マネー雑誌の連載のほか、執筆多数。最新刊『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った「株」チャートらくらく航海術』(ダイヤモンド社刊)では、チャート分析の基本中の基本、ローソク足に徹底的にこだわって騰がる株を見つける方法をわかりやすく解説し、好評を博している。
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