マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
株式会社インベストラストの福永です。今回はプットオプションの活用についてお話したいと思います。プットオプションは売る権利を売買するものでしたが、売る権利を活用する方法とはどういうものでしょうか。
通常みなさんの取引は株を買って保有し、値上がりしたら売却して利益を得るという形だと思いますが、このところの株価動向を見る限り、ユーロ圏の問題が重石となって外部環境に不透明感が漂ったままでなかなか株を保有し続けるというのが難しい状況になってきていると考えられます。
そのため、投資家はデイトレードやスイングトレードで利益が出たらすぐに売却するか、売買そのものを減らさざるを得ない状況になってしまっているようです。
このように、株価が値下がりすると考えた時にプットオプションを購入して株価が値下がりした時に備えるのです。
例えば、2012年6月4日に日経平均株価が8,500円を割り込んだ時、ある投資家がETFを8,500円で1,000株購入したとします。ETFは日経平均株価と連動するように作られていますので、日経平均株価が8,500円を割り込むとETFにも損失が発生することが懸念されるわけですが、6月22日現在の日経平均株価がおよそ8,750円となっており、およそ25万円の利益が出ている状況になっています。
このような状況の時にプットオプションを購入して値下がりリスクを回避(ヘッジ)するのですが、この時に気を付けるポイントが権利行使価格、枚数と限月になります。
まず権利行使価格から考えてみましょう。プットオプションは売る権利ですので、実際の日経平均株価が権利行使価格以下になると、その分本質的価値が発生して価格が上昇することになります。
今回のケースでは、保有中のETFが8,500円以下に下がって損失が出てしまうことを回避したいことに加え、できれば利益も確保したいわけですから、現在の日経平均株価に近い権利行使価格のプットオプションを選択するわけです。もうおわかりだと思いますが、選択するのは権利行使価格が8,750円のプットオプションになります。
続いて権利行使価格が8,750円のプットオプションの枚数です。このケースでは保有株の時価が8,750円(購入価格)×1,000株=875万円。また、プットオプション1枚の価値も8,750円(権利行使価格)×1,000倍=875万円ですので、このケースではプットオプション1枚を購入することになります。
さらに限月ですが、こちらは満期までの期間が長くなってしまうと、本質的価値に加え時間的価値の分だけ価格が高いことが考えられますし、いつごろまでリスクを回避するのかによっても選ぶ限月が異なってきます。
したがって、リスクヘッジのための資金を最小限に抑えたい場合、満期までの期間の短いものを選ぶ必要があると思われます。
仮に最終売買日が2012年7月12日となっている7月限のプットオプションを選ぶと、6月22日の価格は125円になりました。
これで保有ETFの値下がりを回避するためのプットオプションの条件が揃いました。
まとめますと・・・。
権利行使価格=8,750円、枚数=1枚、限月=7月限(7月12日最終売買日)、価格=125円となり、ETFの含み益(8,750円-8,500円)×1,000倍×1枚=25万円に対して、プットオプションのプレミアム料125円×1,000倍×1=12.5万円を支払うことによって、株価が大幅に値下がりしても、現在保有しているETFの利益の半分(25万円-12.5万円=12.5万円)が確保されることなると同時に、心配に反して株価が大きく値上がりした時にはその分の利益を享受できることになるわけです。
今日ご紹介したプットオプションを活用する手法をプロテクティブプットといいますが、みなさんの中にはリスクを回避するために資金を使うのはもったいないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。ただリスクを回避しながら長期で株を保有したいと考えている投資家にとっては、この方法は、簡単な値下がりリスクの回避手法として利用できるのではないかと思われます。
また、現在オプションのサイズは1,000倍ですが、今後1,000倍から10倍くらいまで小さいサイズに変更されれば、プロテクティブプットがもっと使いやすくなるのではないかと思われます。
コラム執筆:福永 博之
株式会社インベストラスト代表取締役。IFTA国際検定テクニカルアナリスト。ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ 株式・資産形成講座 講師。勧角証券(現みずほインベスターズ証券)、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)、同証券経済研究所チーフストラテジストを経て、現職。現在、投資教育サイト《アイトラスト》の総監修を務める。ラジオNIKKEI、テレビ東京、TOKYO MXテレビ、CS日テレなどの株式関連番組にレギュラー出演。マネー雑誌の連載のほか、執筆多数。最新刊『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った「株」チャートらくらく航海術』(ダイヤモンド社刊)では、チャート分析の基本中の基本、ローソク足に徹底的にこだわって騰がる株を見つける方法をわかりやすく解説し、好評を博している。
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