マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
J-REIT市場の価格は、海外市場が一定の安定を示したことでさらに上昇しています。東証REIT指数は、6月末にほぼ2ヶ月ぶりとなる950ポイント超えを果たし、2012年7月4日時点では962.74ポイントとなっています。東証REIT指数は、直近の最安値883.38(6月4日)から9%弱の上昇を示したことになります。
このような上昇局面での銘柄選択として、今回はフロンティア不動産投資法人(証券コード8964、以下FRI)を取り上げます。その理由は、以下の二点です。
(1)J-REIT市場は、短期的な上昇余地はまだあるものの下落要素もつきまとう状況
(2)FRIは今回の上昇局面で増資を公表(6月25日)した唯一の銘柄
前回の連載(6月20日)で記載した通り、J-REIT市場は価格面でまだ上昇の余地はあると考えられます。東証REIT指数は、前回記載時点の930ポイント弱から960ポイント台まで上昇しました。一方で過去1年(2011/07-2012/06)の東証REIT指数の平均は、920ポイント程度でした。現在の価格水準は、欧州の債務問題が再燃した場合に下落する余地が大きくなっている状態になっているのです。このような状況の中では、より下落リスクの少ない銘柄を選択する必要があるのではないでしょうか。この点で増資を行った銘柄は、市場全体が上昇局面の中では出遅れ感が強い銘柄となるため有力な選択肢として考えられます。
FRIは、イトーヨーカ堂やイオンなどの郊外型商業施設やアパレルが店舗を展開する繁華街の都市型商業施設などに投資する商業施設特化銘柄です。FRIが今回増資を行った理由は、物件を取得すると共に前回の増資(2010年7月)以降の物件取得でこの銘柄としては高い状態になっていた借入金比率を低下させるためです。増資による調達資金200億円のうち物件取得には88億円を充て、残額は借入金の返済資金となります。
増資によるFRIの株価に対する影響は、図表の通りややマイナスに働いています。しかし私はFRIのこの増資の影響は、比較的短期間で収束できるのではないかと考えています。私が、このように考える最大の理由は、今回の増資が増資前の1口あたり出資額(561,120円)に対し増資の公募価格(631,800円)が高い「プレミアム増資」にあたるためです。 増資前と比較すると少ない投資口で資金調達を行えることになりますので、ダイリューション(1口あたり利益の希薄化)の影響を実質的に回避できることになるのです。
FRIの目先の投資妙味がある時期は、増資の受け渡し期日となっている7月11日以降と考えられます。7月4日終値のFRIの株価652,000円は、公募価格の631,800円より高い水準になっていますので11日以降に利益確定売りによりやや軟調な局面が想定されるためです。
次回は、FRIを含む商業施設銘柄の投資注意点について記載する予定です。
コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介
<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>
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