第9回 ホテルに特化して投資を行う銘柄について【J-REIT投資の考え方】

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第9回 ホテルに特化して投資を行う銘柄について【J-REIT投資の考え方】


J-REIT市場の価格は、前回(2012年8月2日)に記載した時点とほとんど変わらず東証REIT指数では950ポイント前後の動きが続いています。株式市場の7月下旬以降の回復幅が大きくなっているため、J-REITは出遅れ感が生じているように見えます。(図表1)

しかし、これはJ-REIT市場が比較的安定的に推移しているのに対して株式市場の変動幅が大きくなっているために生じたものです。分散投資の観点では株式市場とは異なる値動きを求められているJ-REITは、現状ではその本来の役割を果たしていると考えられます。

さて今回は、ジャパン・ホテル・リート投資法人(証券コード8985、以下、JHRとします)の投資ポイントについて記載していきます。JHRは、日本ホテルファンド投資法人(以下、NHF)がジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人(以下、旧JHR)と2012年4月合併し現名称とした、ホテルに特化して投資を行う銘柄です。ホテルに投資している銘柄は他にもありますが、投資比率の中でホテルが占める割合が極めて低くなっています。従いましてホテルの収益特性が分配金に大きく影響する銘柄は、J-REITではJHRだけとなっています。いままでの連載では、ある特定の銘柄を対象にその用途の注意点などを説明してきていますが、今回はJHRの投資ポイントからホテル収益の特性を少しでも理解していだければと思います。

JHRの投資ポイントとして最も注意が必要な点は、収益連動型の賃料契約の投資割合が高い(図表2)という点です。J-REITが保有する物件の大半は、テナントと固定賃料での契約を締結しています。例外として都市型商業施設に投資する銘柄の一部では、変動賃料を採用している場合もありますが、その銘柄の賃貸収入に占める割合が5%を超える事例はありません。しかしJHRは変動賃料の比率が極めて高く、JHRの2012年12月期の業績予想では、変動賃料の賃貸収入に占める割合は28%に迫る水準になっているのです。

JHRの変動賃料は、基本的にホテル売上から人件費などを除く経費を除外したGOP(Gross Operating Profit)に契約毎に一定の割合を乗じて算出されます。GOPは売上次第で増減しますので、JHRの変動賃料部分は、ホテルの売上げ依存度が高いということになります。旧JHRが東日本大震災の後に一時的に業績予想を未定とした理由も、保有ホテルの収益予想が困難になったためです。

またJHRがJ-REITで唯一年1回(12月)の決算となっている理由も、GOPにより賃料が変動するためです。JHRが年2回決算とすると、ホテル売上が増加する夏期を含む決算期とそれ以外の決算期では収益の大幅変動が生じてしまうことになるからです。

一方で前掲図表2の通り、JHRは固定賃料契約の物件も多く保有しています。固定賃料物件の多くは、宿泊に特化したいわゆるビジネスホテルです。ビジネスホテルの比率を高くした方が収益の安定性が高くなるように見えますが、JHRは「特に選別的に対応する(※)」として慎重な投資方針を示しています。その理由は、ビジネスホテルの場合、競合ホテルが低い宿泊単価で参入くると対抗措置としてそのホテルの宿泊単価も引き下げざるを得ないためです。宿泊単価を下げるとテナントの収益力が低下し、固定契約であっても賃料改訂時には、テナントから引き下げの要請を受けることになるのです。ビジネスホテルは短期的には収益が安定しますが、既に競合が多く存在し宿泊単価の水準が形成されている地域以外では賃料が一旦下落すると元に戻りにくいという特性を持っているのです。

JHRの利回りが高い状態になっている理由は、上記のように収益安定性に投資家が疑問をもっているためと考えられます。

ただし見方によっては投資余地がある銘柄とも言えます。JHRは冒頭に記載した通り、合併を行っており「負ののれん(合併差益)」が180億円程度発生する見込みです。JHRは、合併差益の活用方法として収益力が高い物件に投資するために保有物件を売却した場合の売却損に充当する方針を示しています。ポートフォリオが改善する余地は大きいと考えられるのです。また合併に伴い投資口を12分割したため、投資単位が2万円程度と低くなっています。JHRのポートフォリオ改善を期待できるという投資家であれば、その進展を見ながら期間を分散して投資が可能という点もJHR投資のメリットと考えられます。

※2012年5月24日JHR第12期(2012年3月期)決算説明会資料P12記載

コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介

<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

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