マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
前回の連載(8月16日)では、2012年4月に合併したジャパン・ホテル・リート投資法人(証券コード8985、以下、JHRとします)の投資ポイントについて記載しました。簡単にまとめると「変動賃料の比率が他銘柄と比較して高い」という注意点がある一方で「合併による負ののれん(以下、合併差益)を活用しポートフォリオの充実を図る方針」という注目点を記載しました。
この記事掲載後の2012年8月28日にJHRは、公募増資と共に2物件の取得及び1物件の売却を公表しました。この増資で合併後のJHRの運営について前回記載時点より明確になった部分があります。従いまして、今回は前回の補足として引き続きJHRについて記載していきます。
JHRは増資により最大252,000口(オーバーアロットメントによる売出含む)を発行し、発行後の総投資口数は最大で13.5%増え2,111,281口となる予定です。調達資金は49億円を見込み、ホテル2棟取得の資金の一部となります。2物件の取得で図表1の通りポートフォリオの改善を目指すとしています。冒頭に記載したJHRの注目点が、はやくも実行された形になったと言えるでしょう。JHRは唯一ホテルを主要投資用途としている銘柄です。ホテルは他用途の不動産と比較すると取得競合が少ないため、JHRが高い利回りでの物件を購入できることに寄与していると考えられます。
(図表1)増資に伴う物件の異動効果
※物件利回り=賃貸NOI利回り(NOI=(賃貸事業収益+減価償却費)÷物件取得額)
(出典)JHR「今回の一連の取組みについて」(2012年)8月28日付を元にアイビー総研株式会社作成
増資に伴いJHRは、業績予想を修正しています。営業収益は2物件の取得により3.3%増収となりますが、1物件の売却損失の発生で当期純利益ベースで4.0%の減益を予想しています。ただし、1口当たり分配金は、合併差益186億円のうち12億円弱を活用して業績予想修正前と同じ金額 の1,341円としています。
JHRは、合併差益を分配金安定化のために活用する方針を以前から示していました。具体例としては、(1)物件売却に伴う譲渡損失への対応、(2)改装等によるホテル営業の一時的な売り止めに伴う賃料減少への対応、(3)改装等により発生する固定資産除却損への対応、(4)新投資口発行に伴う希薄化への対応、という四点(※)です。増資による投資口の増加と物件売却損失が発生しましたが、前述の通り1口あたり分配金は維持できる見込みとなりました。つまり上記(1)と(4)は投資家に具体的な形で示されたことになります。
このように見ていくとJHRは、合併後に投資家に示した方針を着実に実行していると言えるでしょう。従って投資家として今後長期的に注目するべき点は、まだ実施していないホテルの改装(上記(2)と(3))をどのような規模で実施するのか、という点になります。今期(2012年12月期)の改装予定は業績予想に含まれていますが、来期以降に大規模な改装が実施されれば合併差益の残高に影響を与えると考えられるためです。
また短期的に注目すべき点は、上記2物件の取得資金の一部として2012年9月19日に予定している60億円の借入金利です。JHRの直近の借入実績は、合併前のジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人が2012年3月24日に実施した借入です。その時は、4年間の長期借入金を1.97%の固定金利と基準金利+1.35%の変動金利で調達しています。今回増資を行うことでJHRは、資本市場から資金調達を行えることを金融機関に示したことになります。この点は、金融機関から見ると貸出する際にプラス材料になると考えられます。JHRが、調達金利の低減を実現できれば分配金の増加余地も拡大する可能性があるのです。
※:2012年5月24日JHR第12期(2012年3月期)決算説明会資料P48記載
コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介
<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>
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