マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。実は9月の第1週に、米国バンガード社視察ツアーに参加してきました。バンガードは1975年に個人投資家向けのインデックス・ファンドを世界で初めて立ち上げた運用会社です。もちろんETFも運用しています。バンガード社のETFの特徴は、何と言っても「低コスト」であることです。
たとえば、米国株式市場全体を網羅する「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF」(VTI)の年間経費率は0.06%。また、新興国株式21カ国に投資を行う「バンガード・MSCI・エマージング・マーケッツETF」(VWO)の年間経費率は0.20%です(※ ちなみに年間経費率とは、信託報酬にその他費用を加えた「年間コスト比率」のこと)。
現在9本のバンガードETFがマネックス証券で購入可能となっています。実はバンガード社のETFでは、純資産額が膨らみバンガードの収入が増えれば、年間コストを下げて投資家に還元することを旨としています(たとえば、前述したVWOの年間コスト0.20%は、他の新興国株式ETFと比べても圧倒的に低いです)。
では、どうしてこのような低コスト体系が実現するのでしょうか?理由は大きく2つあります。ひとつはバンガード社自身の「会社構造」です。皆さんは日本の生保会社の多くが「相互会社」であることをご存知ですか?明治安田生命の正式名称は、明治安田生命保険相互会社です。相互会社とは、保険の加入者(契約者)が会社の「社員」となっている形態を指します。これに似た構造をバンガード社は持っているのです。
実は、バンガード社のファンドを保有する人(ファンド保有者)が、バンガード社そのものを「所有」しています。換言すると、バンガード社はファンド保有者以外によって「所有」されていないのです。したがって外部株主が存在せず、外部の利害者のために「利益」や「配当」を捻出する必要がありません。ファンド保有者のみを見て経営が出来る、つまり、実質「実費経営」が可能になっているのです。
ふたつ目の理由は「シェアクラス」と呼ばれる、バンガード独自のETFの構造です。実はバンガード社のETFはすべて既存のインデックス・ファンドの「サブクラス」として成り立っています。潤沢なインデックス・ファンド資産の一部を用いて、ETFを「新たなクラス」として立ち上げたのです。他のETF運用会社が行う、ゼロから資産を積み上げるケースに比べ、コストを抑えることができます。
また、銘柄の入れ換え等で売買が必要な際も、既存の膨大な純資産があるため、規模の利益を活かして取引コストを抑えることができます。バンガード社は上記のようなETF組成のしくみを「シェアクラス」と命名して、ビジネス特許を取得しているのです。また近年、バンガードETFとi シェアーズのETFの競争が熾烈を極めています。前述したVWOは、同じ投資対象のiシェアーズ MSCIエマージングマーケット・インデックスファンド(EEM)を純資産額で追い抜きました。また、米国債券総合ETFであるバンガード・米国トータル債券市場ETF(BND)も、同じ投資対象のiシェアーズバークレイズ米国総合ファンド(AGG)を純資産額で凌駕しています。今後益々、低コスト体質のバンガードETFは、ETFマーケットにおいて強みを発揮すると考えられます。
コラム執筆:カン・チュンド
晋陽FPオフィス代表
2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。
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