第11回 注意点が必要なJ-REITの物件取得手法とは【J-REIT投資の考え方】

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第11回 注意点が必要なJ-REITの物件取得手法とは【J-REIT投資の考え方】

東証REIT指数は、9月25日に節目となる1,000ポイントを越えました。その後も10月3日時点まで7営業日連続で1,000ポイント以上を維持しています。東証REIT指数が5営業日以上1,000ポイントを超えた水準で推移するのは2011年7月以来です。

しかし前回の連載(9月20日)でhttp://lounge.monex.co.jp/pro/special1/2012/09/20.html記載した通り、今回のJ-REIT市場の上昇相場は比較的短期間になると考えられます。すでに株式市場は軟調に転じていますので、今後の短期的な上昇を期待して投資を行うには慎重になる必要がありそうです。

さて今回は、9月に相次いで公表されたJ-REITによる匿名組合出資持分の取得のメリットとデメリットについて記載します。J-REITが取得する匿名組合出資持分は、不動産保有のために設立された投資ビークル(以下SPC)の資本金にあたる部分になります。つまりSPCに対する投資をJ-REITが行ない、SPCからの配当を受け取るということになるのです。

9月は日本アコモデーションファンド投資法人(証券コード3226、以下NAF)、アドバンス・レジデンス投資法人(証券コード3269、以下ADR)及びジャパンエクセレント投資法人(証券コード8987、以下JEI)が匿名組合出資持分を取得(以下、SPC投資)しました。

J-REITのSPC投資は従来から行われていましたが、2011年から比較的活発になっています。その最大の理由は、J-REITの株価はリーマンショックの影響を脱した2010年以降も乱高下をしていることで安定的な物件取得が困難になっているためです。

J-REITは増資を行う時に、希薄化の影響を避けるために物件取得も併せて行います。しかし株価が大幅に下落することで増資を断念すると増資に併せて行っていた物件取得も中止することになります。取得予定だった物件は、他社や他銘柄に売却されてしまう可能性が高くなるのです。このような状況を避けるためにJ-REITは、SPC投資を活用しています。上記ADRのSPC投資の場合は具体的には次のような条件が設定されています。

1.ADRは合同会社RISINGにSPC投資を行う


2.SPC投資により6物件購入の場合、8,963百万円で優先的に取得できるという優先交渉権を取得(※)

3.優先交渉権の行使時期は2014年5月末日まで

ここでのポイントは、3の行使時期が比較的長い期間で設定されていることです。ADRは、今後短期的に株価が低迷しても2014年5月末までの株価が回復した時期に増資を行えば合同会社RISINGが保有する6物件を取得することが可能になるのです。このようにSPC投資は、J-REITにとって物件取得時期を弾力的に変動させることができるというメリットがあるのです。

ただし、SPC投資にもデメリットがあります。最大のデメリットは、優先交渉権の行使期間中に物件取得が出来なかった場合にSPC投資が毀損する可能性があることです。SPCは、運用期間終了時に物件を売却して投資家からの資金を返却します。物件売却損が発生した場合には、SPC投資分が毀損するのです。前記図表の場合では、SPCの運用期間は2014年12月末までになっているため、その時期に不動産が6,395百万円以下で売却されるとSPC投資は全額が毀損します。J-REITのSPC投資では、このような大幅な損失が発生した事はまだありませんが、投資事例が増加しているため損失発生の可能性が高くなっていると考えられるのです。投資家としては、SPC投資を行っている銘柄に対してメリットだけではなくデメリットが存在することを考慮する必要性が高くなっているのです。

※物件個別ごとに優先交渉価格が設定されている。

<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

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