第12回 日銀のJ-REIT買取り枠増加期待の背景と注意点【J-REIT投資の考え方】

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第12回 日銀のJ-REIT買取り枠増加期待の背景と注意点【J-REIT投資の考え方】


J-REITの価格は、前回の連載(2012年10月4日)以降も堅調に推移しています。東証REIT指数は、今週に入り年初来高値を更新し続け10月17日には1,034.12ポイントとなりました。

堅調な値動きが続く背景には

【1】欧州債務問題の沈静化

【2】海外収益下落リスクがないJ-REITの収益特性

【3】日銀のJ-REIT買取り枠増加期待

の三点があると考えられます。J-REITの2010年以降の価格は、欧州債務問題の深刻化懸念が強まると大幅に下落し、その後回復を示すという動きを繰り返してきました。J-REITの価格が、2012年6月以降は堅調に上昇している大きな要因として欧州債務問題の沈静化が働いているのです。また株式市場は一時的には上昇するものの【2】の海外収益下落懸念を要因として8月以降も不安定な動きが続いています。一方でJ-REITは、国内不動産しか保有していないため株式市場での内需株と同様の収益特性になっています。投資家がこの収益特性を好感しているため、J-REITの価格が堅調に推移しているものと考えられます。

さらに10月になってから、【3】の日銀のJ-REIT買取り枠増加期待が高まっています。この点が価格上昇に伴う投資家の利益確定売りを抑制し、東証REIT指数が1,000ポイントを超える水準を維持している要因になっている可能性があります。そこで今回の日銀によるJ-REITの買取り枠増加期待の背景とその注意点について記載します。

日銀の直近の金融緩和は、9月に公表されています。しかしこの金融緩和は国債の買取り枠増加を中心としたもので、J-REITの買取り枠増加は実施されませんでした。日銀のJ-REIT買取り枠は、2010年10月に500億円の規模で始まり2011年3月に1,000億円、同年8月に1,100億円、2012年5月に1,200億円と増額され、買取りの期限も延長されてきています。9月以降も日銀に対する金融緩和圧力が続いていること及び比較的価格が堅調であった10月1日から5日にかけて3営業日で72億円の買取りを実施したことから、J-REIT買取り枠の増加期待が高まっています。

日銀が単月で50億円を超える買取りをおこなったのは、2010年12月に買取りを実施し始めてから過去においては2011年3月、8月、9月、2012年5月の4回(図表参照)しかありません。この4回は全てJ-REITの価格が急落した時期であり、積極的に日銀が買い支えていたと見ることができます。一方で今年10月初旬は冒頭に記載した通り、J-REITの価格が順調に推移した時期でした。つまり今年10月の買取りは、やや異例とも言えるものだったのです。さらに現在の買取り枠1,200億円は、10月5日までの72億円で累計買取り額が1,043億円となりあと160億円を切る水準まで減少しました。この点から10月5日までの買取りは枠の「消化」を急いだという見方もできるのです。

このように日銀の買取り枠増加は、蓋然性が高くなっていると考えられます。一方でJ-REITの価格には織り込まれていると考えるべきです。従って、実際に買取り枠の増加が公表されたとしても価格上昇に与える影響は限定的だと考えられる点が注意点でしょう。唯一、ポジティブサプライズとなる要因があるとすれば、日銀の買取り枠の設定方法変更です。日銀の買取り枠は、格付け会社によってAA格以上の格付けを得ている銘柄であること及び各銘柄の5%以上の投資口を取得しないという条件が設定されています。日銀による買取りは、いままでは市況低迷時に実施されてきているため、銘柄によっては5%の上限近く買取りを実施している銘柄が存在する可能性(※)があります。従って買取り方法に関して各銘柄の投資口の買取り枠上限を5%から緩和することになれば、J-REIT価格の大幅上昇要因になることもありそうです。


※日銀は、買取り実施日をホームページで公表していますが個別銘柄の投資状況は開示していません。また日銀は、信託銀行に委託して買取りを実施しているため、各銘柄の大口投資主に日銀の名称が出てくることはありません。

<本内容は、筆者(関 大介)の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

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