第7回 オプション戦略についての考え方 その2 【福永博之の先物・オプション講座 ステップアップ編】

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第7回 オプション戦略についての考え方 その2 【福永博之の先物・オプション講座 ステップアップ編】

株式会社インベストラストの福永博之です。今回はオプションの戦略についてお話ししますが、なかでも方向感がつかみにくい「保ち合い(もちあい)」時の戦略についてのお話です。

テクニカル分析で「三角保ち合い」という言葉を聞かれたことがあると思います。三角保ち合いはテクニカル分析のなかでもフォーメーション分析に分類され、時間が経つにつれて徐々に値動きの幅が小さくなり、最終的には上下どちらかに放れるパターンのことを言います。

この三角保ち合いは、どちらに放れるのか方向感がはっきりしないことに加え、いつごろ方向感が出るのかがわかりづらいのが特徴です。

またそうした中、決め打ちをしてポジションを持ってしまうと、損失が拡大する傾向があります。

従って、こうした保ち合いの時は、方向感がはっきりするまで買いとか売りといった一方方向に的を絞った売買を控えるというのが鉄則なのですが、実際のところ動き出したところからその方向について行くのはそう簡単ではありません。特に昼間仕事で株価を見ることができない投資家にとっては難しいと言えます。

また保ち合いのなか、一気に株価が動き出した時、何もポジションを持っていなければチャンスを逃してしまうばかりか、下落への備えなどができていないと前述のように損失が拡大してしまうことになりかねません。

そこでそうした投資家の投資戦略としての選択肢にあげられるのがオプションなのです。これまでもお話ししたように、オプションは株価が「いつまで」に「いくら」になるかを想定することによって、権利行使価格○○円のコールまたはプットを買うことで、利益を得るチャンスをつかむことができるわけですが、この特徴を生かして、株価がどちらに動いても良いようにコールとプットの両方を同じ枚数購入するのです。

仮に2012年10月29日現在のように、株価が8,900円前後で推移しているケースで、三角保ち合いではないものの、30日に開催される日銀の金融政策決定会合の発表のあとに上下どちらかに大きく動くと想定されるようなとき、もっとも現在価格に近い権利行使価格9,000円のコールオプションとプットオプションを購入することを検討してみるのです。
このとき、29日の日中取引の終値がコールオプション(80円)、プットオプション(170円)となっていますので、投資額が(80円×1+170円×1)×1,000倍=250,000円となります。また損益分岐価格は、手数料や諸経費を除いて9,250円以上、8,750円以下に動いたときに利益が得られることになります。

このように、11月のミニSQ日(9日)までに9,250円以上または8,750円以下に株価が動くと想定する投資家は、ここで紹介したような戦略をとるのです。これを「ロングストラドル」と言います。

一方で、株価は動くと考えているものの250,000円の投資額が高すぎるという人は、プレミアムの大きい権利行使価格9,000円のプットオプションではなく、8,750円のプットオプションを購入して株価の大きな値動きに備えることができます。

ちなみに、11月限の権利行使価格8,750円のプットオプションは60円でした。したがって投資額は(80円×1+60円×1)×1,000倍=140,000円となります。
この場合のSQ値における損益分岐価格は9,140円以上、8,610円以下となり、最大損失は140,000円で済むことになるわけです。

このケースのように異なる権利行使価格のコールとプットオプションを買った場合でも、株価が損益価格以上に動くことによって利益を出せる可能性が出てくるのです。

また、このような戦略を「ロングストラングル」と呼びますが、ここで注意をしなければならないのは、SQ算出日までに株価が動かなかった場合です。なぜなら株価が動かなかった場合、途中で売却しなければどちらの戦略も投資額がゼロになってしまうからです。

たとえば、プットのプレミアムが安い分投資額が少なくて済むものの、損益分岐価格のレンジが「ロングストラドル」の500円に対して、「ロングストラングル」は530円となるなどの違いが見られる一方で、「ロングストラドル」は、ミニSQ値が権利行使価格の9,000円ちょうどにならなければ投資額がゼロになることを免れる反面、「ロングストラングル」の方は、8,610円~9,140円の間でミニSQ値が決まってしまった場合、投資額がゼロになってしまうリスクがあるのです。

では、動かなかった場合に利益を得る手立てはないのでしょうか? 実はちゃんとあります。それは、ここでご紹介した「ストラドル」、「ストラングル」を売り建てする「ショートストラドル」、「ショートストラングル」です。

やり方はロングのまったく逆で、前述と同じ権利行使価格のオプションを売り建てするだけです。ただし、ここでも注意点があります。ショート(売り)は、利益が限定であるのに対して損失は理論上、無限大であるためロスカットをあらかじめ設定しておくなどの準備をするか、機敏に対応をする必要があると言えます。

いかがでしたでしょうか。今回は11月限のオプションで戦略を立ててみましたが、11月9日のミニSQ算出日までにはたして株価がどちらに動くのでしょうか。あるいは動かないのでしょうか?

この原稿を読まれた皆さんは、是非、結果も見届けて今後の戦略策定に生かすようにしてください。

また、オプションの使い方をマスターして、上昇や下落相場だけでなく、保ち合いや株価が動かないときでも自分なりの投資戦略が立てられるようになってください。
そうすれば、長い投資生活のなかでも利益を積み上げていけるようになるのではないかと思います。

コラム執筆:福永 博之

株式会社インベストラスト代表取締役。IFTA国際検定テクニカルアナリスト。ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ 株式・資産形成講座 講師。勧角証券(現みずほインベスターズ証券)、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)、同証券経済研究所チーフストラテジストを経て、現職。現在、投資教育サイト《アイトラスト》の総監修を務める。ラジオNIKKEI、テレビ東京、TOKYO MXテレビ、CS日テレなどの株式関連番組にレギュラー出演。マネー雑誌の連載のほか、執筆多数。最新刊『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った「株」チャートらくらく航海術』(ダイヤモンド社刊)では、チャート分析の基本中の基本、ローソク足に徹底的にこだわって騰がる株を見つける方法をわかりやすく解説し、好評を博している。

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