マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
J-REITの価格が1月24日以降、急速に上昇しています。2013年に入ってからの東証REIT指数はリーマンショック後の高値1,156.46(2011年1月4日)を超えず、1,140ポイント前後の水準で足踏みしていました。しかし1月25日に1,160ポイントを超えるとリーマンショック後の新高値を連日更新し、1月30日に2008年9月22日以来となる1,200ポイント台を回復しました(図表1)。
(図表1)東証REIT指数とTOPIXの推移(2012/01/04~2013/01/30)
日銀が1月22日に公表した金融緩和策にREIT買取り枠の増額は含まれていませんでした。この点では、価格の下落要因になる可能性もありましたが、株式市場が好調なことに加えて
(1) インフレターゲットに達するまで、買い取ったREITの売却を行なわないこと(2) 日銀総裁の交代後にREIT買取り枠の増額の期待が持ち越されたこと
という面を好感し、価格が上昇しているものと考えられます。
1月のJ-REIT市場の状況を需給面から見ると、3銘柄の増資(日本ビルファンド投資法人・証券コード8951、ジャパンエクセレント投資法人・証券コード8987、アドバンス・レジデンス投資法人・証券コード3269)と2銘柄の新規上場(コンフォリア・レジデンシャル投資法人・証券コード3282、日本プロロジスリート投資法人・証券コード3283)が公表され、供給過剰とも言える時期でした。しかし、価格面では前述の通り大幅な上昇となっていますので投資家のJ-REITに対する投資意欲(需要)が高いことが示されたかたちになりました。
従って今後のJ-REITの価格は、短期的には利益確定の売りによる価格の調整も考えられますが、当面堅調に推移する可能性が高い状況です。ただし投資家の売買動向を見ると、今後も投資信託(J-REITを投資対象としたファンドオブファンズ、以下FOFs)が継続的にJ-REITへの投資を続けるか、という懸念材料が浮上してきています。
J-REIT市場の2012年以降の価格動向は、図表1の通り2012年7月からは順調な上昇を示しています。その要因としてFOFsが6月から12月まで連続して買越し主体となり安定的にJ-REITを購入してきた(図表2)ということが挙げられます。株式市場は、同時期に円高の進展や中国との領土問題などを受けて低迷していました。しかしJ-REITは為替や外需に左右されない内需株の一環として評価を受けていたため、FOFsを通じた投資家の需要をJ-RETが集めていたものと考えられます。
(図表2)主要投資部門別の差引売買金額動向(2012/01~2012/12・単位:億円)
しかし、株式市場は11月中旬以降急速に復調し(図表1)為替動向も円安方向に向かっています。今後は内需株としてのJ-REITの評価は、円安の恩恵を受ける輸出関連株や円安による為替差益も期待できる外国株の投資信託などと比較すると相対的に下がる可能性が高くなっているのです。
さらに日銀のREIT買取り枠は、残り180億円程度と日銀がREIT買取りを公表してから最も低い水準になっているため、現状では買い手として大きな役割を期待できる状況ではありません。このような点から、今後のJ-REIT価格がさらに大きく上昇するためには、12月と同様に外国人投資家の大幅な買越し(12月は200億円以上の買越し)が必要な状況です。
2013年のJ-REIT投資環境は、上記の通り日銀がREITの買取り枠を増加しない限り需給面では外国人頼みという側面が強くなると考えられます。今後J-REITに投資する場合には、FOFsの投資動向と外国人投資家の動向を左右する海外市場の情勢を確認する必要性が今まで以上に高くなっている点に注意が必要です。
コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介
<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>
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