マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
J-REITの価格は上昇カーブこそ穏やかになりましたが、順調に推移しています。東証REIT指数は2月に入ってから1,250ポイントを壁としてやや足踏みを続けていましたが、19日にその壁を越えると20日には1,268.25ポイントまで上昇し、昨年来高値を更新しました。東証REIT指数は2012年12月末に1,114ポイントでしたので、年初来の値上がり率でも13%を超えています。一方で、J-REIT全体の1口あたり分配金水準は、増加傾向を示していますが価格上昇率ほどの増加率にはなっていません。従って価格の上昇によりJ-REIT全体の分配金利回りは4.14%(20日時点)まで低下しています。
このような状況を踏まえ、今回はJ-REIT価格の上昇余地と下落リスクについて記載して行きます。まず価格上昇余地ですが、結論を先にしますと現在の価格水準が天井ではなく、まだ上昇の余地は十分に残っていると考えられます。その理由として
(1) 現状の利回り水準でもまだ低下余地(価格は上昇)があること
(2) 1月の価格上昇の牽引役は国内投資家であったこと
が挙げられます。
J-REITの現状の利回りは、図表の通り2008年9月のリーマンショック後から続いてきた高い水準からは大幅に低下しています。しかしJ-REITの価格に過熱感がなく、株価が安定であった2004年度から2005年度の2年間の利回りは平均3.7%程度でした。つまり現状の4%を上回る利回りの水準は、過熱感が強いと言える状況ではないのです。
またJ-REITの1月の価格上昇は、投資信託(J-REITを投資対象とするファンドオブファンズ、以下FOFs)が牽引しました。FOFsの1月の買越し金額は417億円を超え、東証がJ-REIT投資家の部門別売買動向を公表した2003年4月以降で最も大きな金額となりました。1月は、FOFsに次いで金融機関が251億円を超える買越しを行っています。日銀による同月のREIT買取りは18億円でしたので、実質的には233億円の買越しとなります。
一方で2012年12月を含めJ-REITが大幅な価格上昇をしてきた時の牽引役であった外国人投資家は、1月には10億円弱ではありますが売り越しとなっていました。この要因は、1月に日銀がおこなった金融緩和ではREIT買取り枠の増加が含まれていなかったことだと考えられます。つまり日銀総裁の交代により実施が予定される金融緩和にREIT買取り枠の増額が含まれれば、外国人投資家が大幅な買越しを行う可能性が高くなっているのです。
ただし、今後J-REITに投資する場合には、上記に記載した上昇余地が下落リスクにもつながっているという認識を持つことが重要になりそうです。FOFsの買越し基調は、他の投資商品と比較した場合、昨年夏以降J-REITが順調に価格上昇を示してきたことで投資家の需要が高まったことによるものだと考えられます。しかし2012年12月の政権交代以降、株式市場は大幅に反発を示しています。また株式市場反転の要因にもなっている円安傾向により、海外の投資信託の運用実績が今後高くなることも想定できる状況です。投資家の需要がそのような投資商品に移った場合、FOFsが継続的な「売り手」となることも考えられるのです。
また日銀総裁の交代後に日銀によるJ-REITの買取り枠が増額とならない可能性もあります。その場合でも引き続き買取り枠増額の期待は残るため、急激な下落要因とはならないと考えられますが、外国人投資家の大幅な買越しによる価格上昇の可能性は低くなります。
現状の利回り水準で長期的な投資を検討している投資家にとっては、価格上昇余地もあるという点で投資に適した時期と考えられます。一方でキャピタルゲインも重視する投資家の場合には、短期的な下落リスクも十分に考慮し可能であれば時期を分散した上で投資を行う必要がある時期といえるでしょう。
コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介
<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>
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