第21回 日本ビルファンド投資法人の物件取得について 【J-REIT投資の考え方】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第21回 日本ビルファンド投資法人の物件取得について 【J-REIT投資の考え方】

J-REITの価格は、上昇の勢いを維持したまま推移しています。東証指数は2月27日に2008年8月以来となる1,300ポイントを回復しました。その後、日銀新総裁の人事案が明らかになると大幅な金融緩和に対する期待感が強まり、東証REIT指数は大幅に上昇を示し3月1日には1,350ポイント超え、3月4日には一時的ですが1,400ポイントを超える水準(3月4日終値は1,388.40ポイント)まで達しました。

現在のJ-REITに対する投資家需要は、2月26日から27日の値動きを見れば明らかです。この2日間は、イタリアの選挙情勢により為替が一時的に円高に転じ、株式市場も軟調になっていました。J-REITの価格は、収益が為替に左右されない「内需株」にもかかわらず以前は外国人投資家の動向に左右される側面が強く、海外市場が下落するとJ-REITも株式市場と同様に下落することが多くなっていました。しかし、東証REIT指数は、この期間でも上昇を続けました。つまり2日間の値動きを見ると、国内投資家のJ-REITに対する投資需要は、前回の連載(2月21日)でも記載した通り高い水準を維持しているものと考えられるのです。

当面のJ-REIT市場の価格動向は、日銀総裁交代後の「前例のない金融緩和」期待が続くため、利益確定売りをこなしながら高値を更新する動きが続く可能性が高いと考えられます。しかし、予想分配金利回りは、2007年10月以来となる4%を切る水準まで低下しています。このため、長期的な投資という面では分配金の安定性や成長性に従来以上に注目し銘柄選択を行うことが重要になっていると考えられます。

さて今回は、2月以降にソニーやパナソニックの自社ビルを取得し、新聞報道などを賑わすことが多い日本ビルファンド投資法人(証券コード8951、以下NBF)の最近の物件取得動向について記載して行きます。NBFは図表の通り、2月以降に多くの物件取得を公表しています。通常J-REITは、多額の物件取得を行うと借入金比率が上昇し増資が必要な状態になります。しかしNBFは、2013年1月末時点でJ-REIT最大の9,484億円の資産規模がありました。従って図表の物件取得を行っても資産規模は10%以下の増加率にしかなりません。また2月以降に公表された物件取得は、1月に実施した増資が取得の背景にあります。


20130307_jreit_1mini.jpg


NBFは、1月に実施した増資に併せて5物件の取得(取得合計648億円強)と1物件の売却(売却額141億円)を公表しました。物件取得のために必要な金額は差引き507億円強となりますが、増資で683億円弱の資金調達を行なっているため175億円の資金調達超過になっています。通常J-REITが増資を行う場合は、増資資金と借入金で物件を取得します。つまりNBFの1月の増資は、資金調達超過という点でやや違和感のあるものだったのです。しかし2月以降に公表された物件取得は、取得時のプレスリリース記載の通り増資時の超過資金と借入金を併用して行うものとしています。このように時系列で見ると、2月以降に取得を公表した最大物件の「ソニーシティ大崎」は、増資実施時には既に取得交渉の最終段階に近かったと考えられるのです。つまり調達超過の増資は、2月以降に公表した物件取得を織り込んで行われたためであった可能性が高いと言えるでしょう。

2月以降に公表された物件取得でNBFの資産規模は、1兆円の大台をJ-REITとして初めて超えるものとなりました。このため、製造業などの大企業が保有する大型の自社ビルを取得できる余地は大きくなっています。また今回のソニーやパナソニックからの物件取得だけではなく、2011年9月には三菱重工業から三菱重工ビルを363億円で取得(※1)していることなどでNBFは大型物件を取得できる銘柄としての知名度を上げたことになります。このような点から見てNBFの物件取得における優位性は、2月公表の物件取得でより高くなったものと考えられるのです。

※1:三菱重工ビルの60%相当を取得

コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介

マネックスからのご留意事項

「特集1」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧