マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
J-REITの価格は、前回の連載(5月2日)以降、調整色が強くなっています。東証REIT指数は5月10日に1,500ポイント、14日に1,400ポイントを割り込む結果となりました。東証REIT指数が3月27日に1,700ポイントを超えたことから考えると、大幅な下落にも見えますが、現在の指数(15日終値で1,376ポイント)は3月上旬とほぼ同じ水準であり急激な上昇に伴う必要な調整局面と言えるでしょう。
J-REITの価格下落に伴い、日銀は5月に入り15日までに6営業日で買入れを実施しています。しかし前回の連載(5月2日)で記載した通り、日銀のREIT買入れ枠は4月末時点で73億円まで減少しているため5月の6営業日での買入れ額は僅か24億円です。J-REIT
に関しては、日銀の金融緩和効果は既に切れている状態と考えられます。当面注目すべき動向は、5月21日から22日にかけて予定されている金融政策決定会合です。J-REIT買入れ枠の増額が実現するようであれば、J-REITの価格が反発する可能性があるためです。
さて今回は、6月12日に上場予定の野村不動産マスターファンド投資法人(証券コード3285、以下NMF)について記載していきます。NMFはスポンサーの野村不動産にとっては、野村不動産オフィスファンド投資法人(証券コード8959)、野村不動産レジデンシャル投資法人(証券コード3240))と併せ3本目の上場REITとなります。資産運用会社の野村不動産投資顧問は、これら3つの上場REITの他、私募REITである野村不動産プライベート投資法人も運用しています。上場までのスケジュールは、ブックビルディングが5月27日~31日、発行価格決定日は6月3日が予定されています。
NMFの投資対象は、物流施設と商業施設となっています。上場時のポートフォリオは、首都圏を中心に物流施設18件、商業施設(底地含む)36件の計54件、取得予定額は計2,276億円です。物流施設と商業施設を中心に投資を行う銘柄には大和ハウスリート投資法人(証券コード3263、以下DHR)があります。この2銘柄の大きな違いは次の点と考えられます。
(1)用途比率で比較するとNMFは用途比率が拮抗しているのに対しDHRは物流施設の比率が高い
(2)NMFは、上場時の借入金比率(※)が30%程度と低いのに対しDHRの借入金比率は50%を超えていた
この中で特に注目すべき点は、(2)の低い借入金比率です。NMFの借入金比率は日本ロジスティクスファンド投資法人(証券コード8967)に次ぐ低い数値となっています。借入金比率が低いということは、物件取得の資金調達は増資に頼らずに借入金で行うことが当面は可能であることを意味します。つまりNMFは、上場後に物件取得が可能であれば分配金の増加余地が多い銘柄と言えるのです。また1口あたりの金額が10万円程度と低い単位になりそうですので、個人投資家にも投資しやすい銘柄と言えようです。
一方でNMFは、低い借入金比率としたことで上場時に投資家から1,750億円を超える資金調達を行う予定としています。この金額は、J-REIT上場時としては最大の資金調達となります。冒頭にも記載した通り、J-REITの価格が調整色を強める中でNMFは大規模な供給を行うかたちになります。従って今年2月に上場したコンフォリア・レジデンシャル投資法人(証券コード3282)や日本プロロジスリート投資法人(証券コード3283)のように上場直後に大幅に価格が上昇するという状況は期待できないと考えられます。
※取得額に対する借入金比率を指します。NMFは取得額2,276億円に対し借入金額700億円(700億円÷2,276億円=30.8%)、DHRは取得額1,145億円に対し借入金額610億円(610億円÷1,145億円=53.2%)。
コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介
<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>
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