第27回 MIDリート投資法人の業績予想下方修正について 【J-REIT投資の考え方】

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第27回 MIDリート投資法人の業績予想下方修正について 【J-REIT投資の考え方】

J-REITの価格は、前回の連載(5月16日)以降、乱高下を繰り返しています。東証REIT指数は5月17日、20日の2営業日で連続して70ポイント近く上昇し1,500ポイントを回復しましたが、24日には14日に1,400ポイントを割り込みその後は1,400ポイントを挟んだ展開で推移しています。前回の連載でも記載した通り、現在の東証REIT指数の水準は、3月上旬とほぼ同じとなっていますので、利益確定売りが出やすい状況が続くものと考えられます。

さて今回は、昨日(5月29日)業績予想を大幅に下方修正したMIDリート投資法人(証券コード3227、以下、MIDリート)について記載していきます。MIDリートは関西圏を投資主要地域とする点に特徴を持つオフィスビル主体の総合型銘柄です。

MIDリートは、保有物件である「パナソニック大阪京橋ビル」を6月21日に売却することで売却損が13億円強発生する見込み(※1)となりました。それに伴いMIDリートは、平成25年6月期の業績予想を修正しましたが、図表の通り1口当たり分配金が94%以上も減少するという大幅な下方修正になっています。このような1口当たり予想分配金の大幅下方修正は、現在存続している(※2)投資法人では、インヴィンシブル投資法人(証券コード8963)の平成24年12月期しかありません。つまりMIDリートの分配金修正は、かなり特殊な事例と言えるでしょう。

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J-REITにおいて、物件売却損が10億円を超える事例は特殊とは言えません。しかし売却損が発生する場合は、別の物件で売却益を発生させることでその決算期の損失計上を抑えています。例えば阪急リート投資法人(証券コード8977)は、4月16日に商業施設1棟を売却する際に34億円強の売却損を発生させていますが、別の物件の売却益35億円強で実質的に相殺しています。また合併銘柄では、売却損が発生した場合には合併差益(負ののれん)を活用することで1口あたり分配金への影響を回避しています。MIDリートの場合は、合併銘柄ではないことと売却益を発生させられる適当な保有物件がなかったことで、今回の大幅な下方修正という特殊な事例が発生してしまったのです。

また今回の物件売却損の発生は、投資家として事前にある程度予測できたものでした。売却物件は、昨年10月31日のMIDリートのプレスリリースで1棟全体を借りていたパナソニックが今年5月31日に退去することが公表されていました。1棟全体の利用テナントが退去した場合、複数テナントに賃貸する仕様に変更するには多額の改修費が必要となります。さらにこの物件は昭和49年8月竣工とかなり築年数が経過している上に、2013年の大阪のオフィス市況は、グランフロント大阪(大阪駅北口再開発)の竣工も含め供給が大幅の増加する年に当たりテナント誘致が厳しい状態です。つまり、投資家として6月にMIDリートがこの物件を売却することは想定できなくても、テナント退去のプレスリリースがあった段階で物件売却の可能性を検討しておく必要があったのです。

MIDリートは、今回の物件売却で当面の懸念材料を払拭したかたちになりました。また売却に併せて物件を取得したことで平成25年12月期の1口当たり予想分配金は従来(※3)の5,868円から6,287円と419円上方修正しています。ただし、保有物件の多くは含み損を抱えたままの状態です。従って今後大口テナントが退去する事態が発生すれば、同様の事態も考えられる状況が続いています。MIDリートに投資を行うには、テナント動向を充分確認する必要があると言えるでしょう。

※1:MIDリートの平成25年5月29日付け「平成25年6月期(第14期)の運用状況及び分配金予想の修正に関するお知らせ」及び「資産の譲渡に関するお知らせ<パナソニック大阪京橋ビル>」に拠る。
※2:現在存続していない投資法人では、実質的に破綻したニューシティ・レジデンス投資法人の平成20年8月期やプロスペクト・リート投資法人が吸収合併される直前の特殊な決算期(平成22年6月期)に1口あたり分配金が「0円」なった事例がある。
※3:平成25年2月14日付け公表値。

コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介

<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

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