第28回 日銀のREIT買入れ枠について 【J-REIT投資の考え方】

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第28回 日銀のREIT買入れ枠について 【J-REIT投資の考え方】

J-REITの価格は、前回の連載(5月30日)に記載した通り利益確定売りにおされる展開になっています。東証REIT指数は5月30日に1,400ポイントを割り込み、その後も軟調な値動きが続いているため1,300ポイント割れを意識する展開になっています。2月27日にリーマンショック後としては初の1,300ポイント超えを果たしていますので、J-REITの価格は3月の急騰分をほぼ打ち消した状態と言えるでしょう。

当面の価格動向は、株式市場が軟調な状況が続けば下落基調が続く可能性があります。一方でJ-REIT市場を利回りの面で見ると、価格の低下に伴い平均利回りでほぼ4%の水準まで上昇しています。特に収益の安定性が高い住居系の銘柄は、住居系で時価総額が最も大きいアドバンス・レジデンス投資法人(証券コード3269)の利回りが4.3%(6月5日時点)となっているのを含め、全て4%を超える利回りとなっています。従って、2年から3年程度の中期的な投資を検討する投資家にとっては投資妙味が増している状況と考えられます。

さて今回は、市場が軟調に転じている要因とも言われている日銀のREIT買入れ枠について記載していきます。日銀は2010年10月にJ-REITの個別銘柄買入れを公表して以来、買入れ期間の延長や買入れ枠の増額を行ってきています。直近の買入れ枠増額は、黒田日銀総裁が就任して最初の金融緩和となった4月4日に行われました。具体的には2013年、2014年に年間300億円のREIT買入れを実施するというものでした。

日銀の買入れ枠の増額規模は、過去には東日本大震災があった2011年3月に500億円とした以外は100億円を続けてきていました。この点でみれば300億円という金額は大きく見えます。しかし前述の4月4日の買入れ枠増額は、年間300億円買入れを行ない年末時点で1,400億円(※)とするものでした。一方で日銀は、2011年10月の金融緩和で買入れ枠を既に1,300億円まで増加させていました。つまり4月4日の金融緩和は、従来と同様の100億円の買入れ枠増額でしかなく、J-REITに関しては通常の緩和策が公表されただけだったのです。また金融緩和を公表した4月4日までに買入れ実施額は1,242億円に達していましたので、年末までの買入れ枠の残額は160億円程度になっていました。

金融緩和公表後にJ-REIT市場は軟調に転じたため、日銀は4月に単月で132億円の買入れを実施しました。このためJ-REITの買入れ枠は急速に減少することになり、5月は過去最高の14回もの買入れ実施を行いましたが買入れ額は40億円に留まり、平均買入れ額が過去最低の3億円弱まで低下(図表)しました。6月4日の買入れ額は過去最低の1億円となりましたが、すでにその予兆は5月の段階で明確になっていたのです。


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残りの買入れ枠は6月4日時点で19億円(※)程度となっているため、買入れ枠増額がないと買入れをしても当面は相場にインパクトを与えるような買入れ額の実施は難しい状況です。従って2010年10月以来、続いてきた日銀のJ-REIT市場に対する下支え効果は現状失われている状況となっています。

ただし、日銀が「異次元」のREIT買入れ枠増額を実施すればJ-REIT価格の大幅反転も期待できると考えられます。外国人投資家は、前述した4月4日の金融緩和を受けて4月にはJ-REITに対し800億円近い買越しを行っているため、「政策に売り無し」という投資スタンスが続いている可能性が高いためです。

※2012年12月末時点の買入れ額は1,111億円であったため、2013年に300億円買入れを実施すれば1,411億円となる。日銀の開示単位が兆円であり、2013年末0.14兆円と記載しているためここでは1,400億円としている。

コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介

<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

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