第29回 野村不動産オフィスファンド投資法人の増資について 【J-REIT投資の考え方】

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第29回 野村不動産オフィスファンド投資法人の増資について 【J-REIT投資の考え方】

J-REITの価格は、やや落ち着きを取り戻した状況になっています。東証REIT指数は前回の連載時(6月6日)以降、1,300ポイントを挟んだ展開で推移しています。前回の連載で記載した日銀のREIT買入れ枠に関して、6月11日に黒田日銀総裁が2013年末時点の買入れ枠1,400億円には拘らない、というコメントを出しています。ただし、具体的な数値の発表がない点や日銀は6月11日以降も1億円という過去最低水準での買入れ実施を続けているため、相場反転の要因にはならないものと考えられます。当面はアメリカFRBの金融緩和の動向にJ-REIT価格も影響を受ける可能性が高くなっています。

さて今回は、オフィスビルに特化して運用を行う野村不動産オフィスファンド投資法人(証券コード8959、以下NOF)が6月14日の取引時間終了後に公表した増資(以下、今回の増資、という)について記載して行きます。NOFの株価は、増資公表後に急落し6月18日には年初来安値となる425,000円を付ける局面(同日終値は429,500円)もありました。増資公表前1週間(6月10日から6月14日)の終値平均値は503,600円でしたので15%を超える下落になっています。株価から見て、NOFの今回の増資は、投資家に不評であったと言えるでしょう。

投資家に不評となった最大の要因は、1口あたり分配金を大幅に減少させる増資であったためと考えられます。NOFは5月1日に第20期(2013年10月期)の1口あたり予想分配金を11,300円と公表していました。しかし増資後に修正した第20期の1口あたり予想分配金は11%減少の10,000円としています(図表)。さらに第20期10,000円の予想分配金は、5月1日に公表した業績予想には含まれていなかった物件売却益の内部留保を取り崩す前提としています。修正後の業績予想では内部留保1億5600万円を取り崩すとしています(※1)ので、1口あたり418円程度が上乗せされて1口あたり10,000円の予想となっているのです。なお、同時に公表した第21期(2014年4月期)の1口あたり予想分配金10,000円も物件売却益の内部留保を取り崩す前提としています。

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このように大幅に分配金が減少する最大の要因は、物件取得額を大幅に上回る資金調達を行う増資(以下、オーバーエクイティ、という)になるためです。具体的には、取得予定3物件の合計112億円強(取得諸経費を含む)に対し350億円弱を調達(※2)する予定としています。これにより、差額の230億円弱を借入金返済に充てることで借入金比率が低下します。

ただし、今回の増資に違和感を持つ投資家が多いものと考えられます。その理由は、NOFは資産規模が3,700億円を超えているため、112億円程度の物件取得は借入金で充分調達できると考えられるためです。J-REITが増資によって借入金比率を引き下げることは珍しい事例ではありませんが、オーバーエクイティは希有な事例です。オーバーエクイティを行った直近の事例としては、日本ビルファンド投資法人(証券コード8951、以下NBF)の2013年1月の増資が挙げられます。ただし、NBFは増資公表後の2月下旬に大型物件の取得を公表することで、実質的にオーバーエクイティを解消しています。この事例を参考にすればNOFが今後、大型物件の取得を行うことが考えられます。増資により資金的な余裕を持ち、交渉中の大型物件取得に目処を付けるという戦略です。そうなれば、NOFの分配金は、一定の回復も期待できそうです。

一方で、NOFは第18期(2012年10月期)末時点で含み損が418億円強も発生しています。第18期の含み損を考慮した借入金比率は50%(※3)を超えていたため、物件取得を借入金で行うことが難しい状態になっていたとも考えられます。NOFは、増資の理由として「取得余力の創出を図るため」(※2)と記載していますので一定規模の物件取得の可能性はありそうですが、この場合には、前述の大型物件取得は期待できないことになります。

※1:NOFが6月14日に公表した「平成25年10月期運用状況の予想の修正及び平成26年4月期運用状況の予想に関するお知らせ」に拠る。

※2:NOFが6月14日に公表した「新投資口発行及び投資口売出しに関するお知らせ」に拠る。なお調達金額の前提としている株価は518,600円となっている。

※3:算出式=(総資産397,375百万円―含み損41,883百万)÷有利子負債182,650百万円

コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介

<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

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