マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
さて今回は、7月12日に上場した星野リゾート・リート投資法人(証券コード3287、以下HRR)について記載していきます。HRRは、名称が示す通りホテルや旅館などの再生ビジネスで名高い星野リゾート(未上場)がスポンサーとして組成した宿泊施設を投資対象としたホテル系銘柄です。従ってHRRは、ジャパン・ホテル・リート投資法人(証券コード8985、以下JHR)が続く2銘柄目のホテル系銘柄となります。なおHRRは、JHRと同様に投資主に対する優待制度を設けています。JHRの投資主優待は、10口以上保有(7月17日終値ベースで38万円)する投資家に対し一部のホテルの正規料金の50%宿泊割引券5枚(※1)などとなっているのに対し、HRRは1口保有する投資主に対し最大10口分まで1名1回の利用料金2千円の割引券を付与する(※2)ものとしています。
HRRの株価は、上場時の公募価格51万円に対し上場初値57万円、上場翌日の16日には65万円を付ける場面もあり昨日(17日)の終値は61万1,000円でした。上場後の株価が大幅に上昇した直近の事例としては、2月14日に上場した日本プロロジスリート投資法人(証券コード3283、以下NPR)が挙げられます。NPRは、公募価格55万円に対し上場初値70万円となりました。ただし、NPRはJ-REIT市場が大幅に上昇していた局面での上場であったことに対し、HRRは冒頭にも記載した通り上場時の市況が追風とは言える状況ではありませんでした。このような状況にもかかわらずHRRの株価が順調な滑り出しとなった背景には、上場後の3営業日の売買口数が18,265口と発行済投資口数の19,000口に対しほぼ100%という極めて高い水準になったことがあります。つまり投資家のHRRへの投資需要が極めて高いものであったと考えられるのです。
HRRの上場時ポートフォリオは図表の通り「星のや 軽井沢」と「リゾナーレ 八ヶ岳」を旗艦物件とする全6物件、取得額合計で150億円となっています。スポンサーである星野リゾートでは物件名称の冠(「星のや 軽井沢」では「星のや」にあたる)で施設毎のグレードを区分していますが、大別すればJHRがホテルを主体としているのとは異なりHRRは高級旅館を主体としたポートフォリオ構成となっています。投資家としては、高級旅館の収益変動リスクが気になるところですが、HRRはテナントである星野リゾート及びそのグループ会社(以下、星野リゾートG)に対し20年という長期契約かつ10年の賃料改定不可、中途解約禁止という条項を付けることで収益の長期安定化を意図しています。この契約は、物件の売主である星野リゾートGがテナントとなることで生じる利益相反(テントとなった星野リゾートGがHRRに賃料減額を要求することなど)を回避する役割も果たしています。
このような点から見れば、HRRは保有物件の収益安定性が高い銘柄と考えてよさそうです。従って投資にあたり最も影響を与える要素は、スポンサーである星野リゾートの経営環境の悪化リスクと考えられます。星野リゾートGは、旅館の再生など運営能力により高い客室単価(ADR)を実現し、それを元にHRRとの賃料を設定しています。仮に星野リゾートが破綻した場合、別の運営者が同様のADRを維持できない可能性が高いため収益の安定性が大きく損なわれることになるのです。星野リゾートは、前述の通り未上場会社であるため経営状況を外部から判断できる材料に乏しく、投資家としてはこの点のリスクを充分に注意する必要があると考えられます。
ただし、未上場会社がスポンサーであるメリットも存在します。スポンサーである星野リゾートは、上場会社とは異なり投資家からの利益増加圧力を受けることがないため、無理にHRRに物件を売却するというような事例を回避できるとも考えられるのです。またスポンサーが未上場会社である銘柄の場合は、物件の再開発価値を重視して鑑定価格を上回る価格でスポンサーに物件売却を行うことも期待できます。このような事例は、森ヒルズリート投資法人(証券コード3234)とスポンサーの森ビルとの間で既に実現しているためです。
HRRの1口当たり予想分配金は、他銘柄と同様に6ヶ月決算となる2014年4月期(第2期)に12,444円とされています。利回りの面で見れば株価が60万円まで下落したとしても第2期をベースでの算出でも4.1%を超える水準(12,444円×2÷60万円)と割安感が薄いものになっています。今後の投資を検討する場合には、他銘柄との利回り格差や上述のスポンサーリスクを充分検討する必要がありそうです。
※1:詳細はJHRのHP(http://www.jhrth.co.jp/stockholder/index.html)に記載されている。
※2:詳細はHRRのHP(http://www.hoshinoresorts-reit.com/ja_cms/ir/stockholder.html)に記載されている。
コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介
<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>
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