マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。
米国の著名なファイナンシャルプランナー、リック・エドルマン氏の著書に「The Lies About Money」があります。同書の中の「ポートフォリオ事例」を見ると、アメリカ人がいかに自国の株式に偏っているかが分かります。ポートフォリオの52%を株式に充てる中で、アメリカ株式43%、海外株式9%という内訳になっているのです。
しかし、アメリカ人の投資家のみが特別なのではありません。ドイツ人はドイツ株に過剰に投資を行い、マレーシア人はマレーシア株に偏って投資を行っています(自国の資産に投資が偏ることを「ホームバイアス現象」と呼んでいます)。特にアメリカ人は、自国のマーケットが巨大であるため、株式投資=アメリカ株と思い込んできた節があります。それが変化するきっかけとなったのが、実はETFなのです。
1996年にモルガン・スタンレーが17本の海外株式ETFをはじめて米国市場に上場させました。ADR(米国預託証券)を除いて、アメリカ人が自国の株式市場ではじめて出会う海外の株式がETFだったのです。これまで、世界は国境で分断された「独自の株式市場」と「独自の個別株」で成り立ってきました。それが様変わりし始めています。Barchart.comで7月19日の米国上場ETF「出来高トップ10」を見てみると、10本のうち2本が海外株式ETFとなっています。出来高トップ10の第4位はなんと日本株式ETF、i シェアーズ MSCI Japan ETF (EWJ)です。当該ETFは東日本大震災が発生した2011年の3月から4月にかけて、出来高が急増しました。大震災・原発事故 → 日本を買うのかそれとも売るのかという思惑のもと、米国の投資家は「ETF」というツールを選択していたのです。海外の「ひとつの企業」という尺度では情報量が乏しいため、なかなか投資の判断が出来ません。ところが、「ひとつの国」という尺度になれば、投資対象が明快で情報収集も「国レベル」に終始すればよいことになります。
実は今、世界のあちらこちらで、国内では「個別株」を選び、海外資産では「ETF」を選択して広い半径の投資を行う投資家が増えています。翻って、日本人は果たして投資の半径を広げているでしょうか・・?日銀の「資金循環統計」によると、個人金融資産に占める外貨建て資産の割合はわずか2.4%にすぎません(2013年3月末)。
先日、ETFの上場市場が東京証券取引所に統合されました。こちらのページを見ていただくと、国内上場のETF・ETNがひと目で把握できます。「東証 ETF・ETN一覧」
http://www.tse.or.jp/rules/etf/list/index.html
自国の株式マーケットに中国やアメリカ、タイやブラジルや南アフリカの株式が(ETFとして)存在することがお分かりいただけるはずです。すでに私たちは、日本に居ながら世界の海に漕ぎ出すことが出来るのです。引き続き東京湾のみを眺めるのか、それとも七つの海を投資の半径とするのか・・、それはあなたの選択次第です。
コラム執筆:カン・チュンド
晋陽FPオフィス代表 http://www.sinyo-fp.com/
2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。
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