マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
J-REITの価格は堅調に推移し、東証REIT指数は前回の連載以降(10月3日)、1,450ポイントを挟んだ動きに終始しています。価格の波乱要因と考えられていた米国の債務上限問題は、何らかの妥協が成立すると考える投資家が多かったため前回の連載以降、大幅な下落局面は到来しませんでした。一方でこの問題がリスク要因として残っている状況は続いているため、上値が押さえ込まれたかたちになっています。
米国の債務上限問題は、現地10月17日(日本では10月18日)が期限とされています。何らかの妥協案が成立しても2014年は米国での中間選挙が行われる年に当たるため、今後は今回以上に妥協が困難になりやすいという認識を持っておく必要が高いものと考えられます。次回の債務上限問題が浮上する時期には、今回以上の価格乱高下を起こす可能性が指摘できるのです。
さて今回は、J-REITの資金調達動向について記載して行きます。J-REIT市場では、2012年4月に ケネディクス・レジデンシャル投資法人(証券コード3278)が4年半ぶりに新規上場(IPO)して以来、IPOの動きが続いています。今年10月9日に上場したSIA不動産投資法人(証券コード3290)で2012年4月から今年10月までで9銘柄が上昇したことになります。また堅調なJ-REIT価格を受けて公募増資(PO)の動きも続いています。
IPO、POともに新規の投資口を発行して投資家から資金を調達することになります。従ってIPO、POともに需給を悪化させ、価格下落要因となりやすい要素です。図表は、2010年以降にJ-REITがIPO、POで資金調達した金額の推移です。2013年は10月の時点で8,525億円の資金調達を行っています。2012年は通年で4,698億円の調達と比較すると2013年の調達額は、前年比でほぼ倍増というかたちになりそうです。投資家としては、新規上場の動きに囚われることも多いと思いますが、図表の通り2013年は特にPOでの調達額が大幅に増加しています。その要因として次ぎの三点が挙げられます。
(1)銘柄数の増加:SIA不動産投資法人の上場でJ-REITの銘柄数はピーク時の42銘柄に戻りました。銘柄数が増加することで、J-REIT全体では結果的に年間ベースでのPO回数が増加することになります。
(2)堅調な価格推移:J-REITは、低い価格で増資を行うと1口当たり分配金の減少を招く希薄化が起こりやすくなります。言い換えれば、高い価格で推移している時期に増資を行うことで希薄化の影響を受けにくい増資が可能となるのです。2013年の東証REIT指数は9月末までで平均1,300ポイントを超える水準となっています。この水準は、図表で示した2010年以降では最も高い数値です。
(3)不動産価格の先高感:いわゆる「アベノミクス」や2020年の東京五輪開催などで不動産価格の先高感が強くなっています。将来的に不動産価格が上がる前に不動産を取得するための資金調達手段として増資を行うとしている銘柄も増えています。
この三点の要因のうち、(1)と(3)については当面変化する可能性はないものと考えらます。従って(2)の要素が変化する、言い換えればJ-REIT価格が下落すれば、増資の動きはやや落ち着くものとなりそうです。ただし現在のJ-REITの価格動向を見る限り、2012年の東証REIT指数の平均値964ポイント程度まで下落する状況に陥る可能性が低いものとなっています。
投資家の総売買金額は、2013年に入り月平均で1兆2000億円程度になっています。2012年が4,100億円程度でしたので2013年は前年比3倍という活発な売買です。この点もIPO、POが順調に消化される要因になっていると考えられます。従って当面は、IPO、POが高水準で推移することになりそうです。
コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介
<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>
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