マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
J-REITの価格は、年初から続く1,450ポイントから1,500ポイントのレンジでの動きに終始しています。4月4日にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がJ-REIT投資を開始したとの公表を受けて高くなる局面もありましたが、株式市場下落の影響を受け上昇の動きは一時的なものとなりました。東証REIT指数は、GPIFの投資開始翌営業日となった4月7日に1,490ポイントとなりましたが、その後は1,450ポイントから1,460ポイント前後の狭いレンジでの取引となっています。
なお、GPIFのJ-REIT投資開始は、対象インデックスの拡大によって実現したものです。具体的にはTOPIXだけであったパッシブ運用の対象指数が拡大され、J-REITが含まれる「MSCI Japan」指数も対象となりました。またアクティブ運用としてJ-REITが含まれる「MSCI Japan Small」や「S&P GIVI Japan」の指数も採用されています。つまりパッシブ運用、アクティブ運用ともにJ-REITへの投資が始まったことになります。一方でアクティブ運用の場合は、運用担当者の判断で投資対象が選択されるためJ-REITの投資が行われない可能性があります。加えてパッシブ運用の指数に含まれるJ-REIT銘柄は図表1の通りですが、指数全体に占める構成比は1%程度と低いため当面価格への影響は限定的なものと考えられます。
さて今回は2014年1月から3月(第一四半期=1Q)の部門別投資家動向(図表2参照)について記載していきます。
【金融機関】
1年前と同様に月平均で200億円近い買い越しとなりました。1年前の1Qは、東証REIT指数が1,140ポイントから1,700ポイントまで駆け上がった時期でした。その時期と同様の買い越しとなった点を見ると、金融機関が2014年に入りJ-REIT投資に積極的になっていることが窺えます。この背景には、4月14日に10年国債の取引が未成立になったことが示す通り国債の流動性が細っていることがあるものと考えられます。
【日銀】
2014年に入り、日銀の年間300億円の買入れ枠が復活したかたちになっています。年間300億円を月平均にすると25億円になりますので、日銀の1Qの買入れはオーバーペースになっています。日銀が2013年におこなった買入れは、年前半に大半の購入枠を使い切ったため年後半には「息切れ」したかたちになりました。日銀の追加金融緩和がないという前提をおく場合には、日銀の今後の買入動向には注意が必要になりそうです。
【投資信託】
2013年の通年平均と同様の買い越し姿勢が維持されています。この背景には、2014年になってからは株式市場と比較してJ-REIT価格の乱高下が少ないことや今後の景気拡大で分配金の増加が期待されていることがあるものを考えられます。一方で投資信託の買い越し姿勢が2014年の安定的な価格動向を支えているという見方もできます。投資信託の月平均買い越し額は、月平均で106億円を買い越しした2006年が暦年ベースでは2013年までの最高額でした。J-REITの投資信託には過去の履歴から見ると異常とも入れる資金流入が続いている状況です。
【個人】
個人の売り越し額は、1年前と比較すると減少したかたちになりました。1年前は大幅な価格上昇期であったため利益確定売りが出やすかったことや、2014年は新規上場や増資の動きが1年前と比較すると少なかった(※)ことが影響しているものと考えられます。
【外国人】
米国の金融緩和縮小の影響を受けて、外国人投資家は大幅な売り越しとなりました。従来のJ-REIT市場であれば、このような動きになった場合には価格が乱高下していましたが、前述の通り投資信託の積極的な投資により外国人の売り越しが吸収されています。言い換えれば外国人投資家の買い越し姿勢が明確になれば、J-REIT市場は価格上昇の余地が大きいものと考えられます。
※新規上場や増資が個人の売り越し額に与える影響については、本連載第43回(2月6日)をご覧ください。
コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介
<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>
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