マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。
通常の投資信託には価格がひとつしかありません。それは『基準価格』と呼ばれます。たとえば株式ファンドでは、1日に一度、マーケットが閉じたあとにその日の価格『基準価格』が決定します。基準価格とはファンドの正味価値であり、NAV(Net Asset Value)と呼ばれます。もちろん、ETFもファンドの一種ですから、基準価格が毎日算出されます。この基準価格はいわばファンドの『理論価格』なのですが、ETFは市場に上場するため、常時『市場価格』も算出されます。つまり、ETFはふたつの価格を持つツールなのです。
今、あなたが保有する日経平均ETFが市場で取引されていると想像してみましょう。当該ETFは日経平均株価に採用される225社の株式をパッケージ化した商品ですから、今、この瞬間の『推定・理論価格』というものが存在します。この『理論価格』と比べて、ETFの『市場価格』が割高になっていたとしたらどうでしょう。あるいは逆に、『理論価格』と比べてETFの『市場価格』が割安のまま放置されたとしたら・・・。
日経平均ETFに対する信頼はたちまち損なわれてしまいますね。実は、ETFには理論価格と市場価格のかい離を防ぐ仕組みが内包されているのです。その役割を担うのが『指定参加者』と呼ばれるETFの裏方です(通常、証券会社が指定参加者となります)。この指定参加者に裁定取引の機会を与えることで、ETFはふたつの価格のズレを防いでいるのです。
具体例を挙げてみましょう。現在、日経平均ETFの「市場価格」が15,200円、理論価格が15,000円になっているとします(つまり、本来価値より市場価格が高くなってしまっている状態)。このとき、ETFの指定参加者は225社の株を市場で購入し、ETFの「設定」を行い、当該ETFを直ちに市場で売却します。こうすることで『利ざや』を稼ぐことができるわけです(これを「裁定取引」と云います)。複数の指定参加者が同時に裁定取引を行えば、日経平均ETFの『市場価格』はたちまち『理論価格』に収斂します。また、市場価格に比べて理論価格が高くなっている場合は、逆の裁定取引を実施します。すなわち、指定参加者が市場で日経平均ETFを購入し、そのユニットを225社の株式と「交換」して、直ちに市場で株を売却するわけです。今述べた、ETFの「設定」(ETFの口数を増やすこと)、ETFの「交換」(ETFの口数を減らすこと)という作業を通じて、指定参加者はETFの流動性もコントロールしています。
実は、市場に上場する投資信託(クローズド・エンド・ファンド)の歴史は古く、1893年に米国市場に上場した「ボストン・パーソナル・プロパティ・トラスト」という上場ファンドにまで遡ることができます。ETF以前の「上場ファンド」では、「理論価格」と「市場価格」のかい離が頻繁に発生し、大きな問題となっていました。ETFは取引時間中に口数を増やしたり、減らしたりすることが認められ、結果として「裁定取引」が可能となり、市場価格と理論価格のかい離を防ぐメリットが生まれました。この点を踏まえても、ETFはファンドの進化形と呼べる金融商品なのです。
コラム執筆:カン・チュンド
晋陽FPオフィス代表 http://www.sinyo-fp.com/
2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。
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